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ブラックジョークが癖になる『逆転のトライアングル』

『逆転のトライアングル』 TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中

本作、2023年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞と主要部門に3部門ノミネートされている作品です。『フレンチアルプスで起きたこと』で第67回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』で第70回カンヌ国際映画祭最高賞であるパルムドールを受賞し、本作でカンヌ史上3人目の2作品連続パルムドール受賞という圧倒的快挙を果たしたリューベン・オストルンド監督の最新作です。

日本では2月23日から劇場公開かれており、アカデミー賞の授賞式より前に鑑賞可能です。今年のアカデミー賞は主要部門にノミネートされている作品の多くが授賞式の前に日本の劇場で鑑賞出来る!ということで授賞式がとても楽しめると思います。

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モデルで人気インフルエンサーのヤヤと、若干落ち目の男性モデル・カールの美男美女カップルが、豪華客船クルーズの旅に。リッチでクセモノだらけの乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでも叶える客室乗務員が笑顔を振りまくゴージャスな世界。しかしある夜、船が難破。そのまま海賊に襲われ、彼らは無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態で、ヒエラルキーの頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な、船のトイレの清掃婦だった――。

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本作の構成はとても良く出来ていて3章からなっているが、その各章で提示していた問題が映画を見終わるころには不思議と綺麗に回収されています。回収というより、答えは見ている観客に委ねる形でありながらもきっと観ているだれもがなにかしらの答えにいきついて劇場を後にするだろうという構成が素晴らしい。

デートに行った時、男性が女性より多く払ったり、奢ったりするというシーンについて、劇中ではカールがヤヤにお互い平等でいるべきだと意見するシーンが登場します。お金の話にギクシャクする2人。そこでお金の話は「セクシーじゃない」というヤヤの台詞が印象的でした。付き合っているだけのカップルの間は良くても、もしも相手との将来を考えた時に言葉を飲み込まず平等に意見を言ったりお互いを思いあうことは必要だと思いました。(実際、飲み込むことも多いだろうが...)
どんな払い方をするのが正解というのはありません。けれど、お互い気持ちよく過ごせる方法をスマートに見つけられるスキルは持っていた方がいいと思いました。

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序盤はあらすじの展開と全く違う感じで先が読めないと思っていました。船の異変が起こるまでに開始から1時間半ほど経過していました。
無人島に流れてついてからはお金持ちであることは意味もなく、サバイバルスキルがある人がコミュニティの頂点に立つ展開。そこからの1時間があっという間だったけど題名の核心をつくようで面白かったです。

男女によっても捉え方が違うだろうなというシーンも多く、ブラックジョークの連発に序盤は少し戸惑いますが、徐々に慣れてくると面白みのほうが増してきていたように思います。現代社会に物申したい!そんな監督の気持ちがひしひしと伝わってくる作品でした。

(文/杉本結)

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『逆転のトライアングル』
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中

監督・脚本:リューベン・オストルンド
出演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソン
配給:ギャガ

原題:Triangle of Sadness
2022/スウェーデン、ドイツ、フランス、イギリス/147分
公式サイト:https://gaga.ne.jp/triangle/
Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

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