もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2023年3月号

映画『マッシブ・タレント』(3月24日公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』十九回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
03月公開の映画からは、この四作品を選びました。

***

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(03月03日公開)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/eeaao/
予告編:https://youtu.be/WRPL89rbrAw

メイン.jpg A24が贈るマルチバース×カンフーのアクション・エンターテイメント『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。
「領収の山の中にあなたの人生が見える」「ギリギリの暮らしで家族も不仲。まさにどん底ね」と税務署職員に言われているエヴリン(ミシェル・ヨー)。また、「僕は君の夫じゃない。別の宇宙から来た"僕"だ」と夫に乗り移った別の宇宙から来た彼から言われる姿もあります。
"僕"からは「全宇宙を脅かす巨悪」から世界を救えるのはエヴリンしかいないことを教えられ、異なる世界の自分にアクセスするように言われる様子も予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。予告編で「巨悪」の正体がエヴリンたちの娘であることがわかります。エヴリンは別の宇宙でのありえたかもしれない自分の可能性と出会うことで、強くなるようです。「マルチバースを飛び回り、世界と家族を救え」というナレーションもあるように、世界を救うためには「どん底」になっている家族の再生が物語の大きな軸となっていくはずです。
 去年の時点でアメリカ公開を羨ましく思っていたので、ようやく映画館で観られるのがマジでうれしいです。また、3月のアカデミー賞でも大本命となっているタイミングでの日本公開はまさに観るしかない「運命」でしょう!

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『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
3月3日(金)より公開
配給:ギャガ
©2022 A24 Distribution LLC. All Rights Reserved.

『ひとりぼっちじゃない』(03月10日公開)
公式サイト:https://hitoribocchijanai.com/
予告編:https://youtu.be/oF-XT-wABNI

 脚本家の伊藤ちひろが書いた小説を彼女自身で監督した『ひとりぼっちじゃない』。人とうまくコミュニケーションがとれない歯科医師のススメ(井口理)が恋をした。
「宮子さんは僕ですらわからない僕を理解してくれて、どんな人間なのかを教えてくれる人だよ」と言うススメ、しかし宮子(馬場ふみか)のことを理解できているかどうかわからないという苦悩を彼は抱えているようです。ミステリアスな宮子の友達(河合優実)が現れたことで、彼女の秘密を知ることになっていく。
 ここからは妄想です。ススメは男性患者から「昨日見かけましたよ」と言われ、「それって先生の生き霊ですよ」というセリフも予告編で聞くことができます。おそらく、患者から言われた場所に彼自身はいなかったことを伝え、看護師がそう答えたのでしょう。となると、タイトルからの連想もそこに加えると、宮子を好きになるほど彼はどんどん分裂していき、さまざまな自分を無意識に作り出している可能性もありそうです。
 また、ススメが分裂していなくても、彼が無意識のうちに動き出して勝手に行動している、そんなサイコさも感じます。しかし、実は宮子自身がクローンのように何人も存在していて、ススメのような男性の元に同時多発的に現れている驚愕のラストもありえるかもしれません。

『ひとりぼっちじゃない』
3月10日(金)より公開
配給:パルコ

『零落』(03月17日公開)
公式サイト:https://happinet-phantom.com/reiraku/
予告編:https://youtu.be/iUM_tGuFkJw

reiraku_main1.jpg 浅野いにお原作×竹中直人監督『零落』。人気漫画家の深澤(斎藤工)は妻で敏腕漫画編集者の町田(MEGUMI)が勧めた漫画に対して「こんなん売れていることに危機感を持てよ」と言っており、「深澤さんはいつも売れている漫画を絶対に認めようとしないから」とアシスタントに言われているシーンが予告編で見ることができます。
「何が面白いとか何が売れてるとかそんなもんに一喜一憂する生活うんざりだよ!」と苛立つ深澤。そんな彼が救いを求めるのが「漫画どちらかというと苦手かも」と言う猫目の風俗嬢のちふゆ(趣里)のようです。
 ここからは妄想です、と言いたいところですが、原作漫画が大好きでいつか映画化するんじゃないかと期待していました。映画化されたことで漫画とは違う展開もありえるかもしれませんが、際立った大きな変化はないように思えます。
 漫画にはなかった海へ向かっていく深澤のシーンがとても印象的です。ちふゆという母性に溺れるというメタファのようにも見えてきます。この映画は中年を迎えたもう若者ではない人たちにとって、仕事への向き合い方と人間関係についての深く染み入る物語にもなっているはずです。この世界にうんざりしている人にこそ観てほしいです。あなたが観終わってから最初に思い浮かべる人は誰でしょうか?

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『零落』
3月17日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
製作幹事・配給:日活/ハピネットファントム・スタジオ
©2023浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会

『マッシブ・タレント』(03月24日公開)
公式サイト:https://massive-talent.net/
予告編:https://youtu.be/7svaEt2XmkA

【メイン】MassiveTalent_main1.jpg 67カ国で初登場TOP10入りのスマッシュヒットとなったニコラス・ケイジの新たな代表作『マッシブ・タレント』。
 落ち目のハリウッドスターのニック・ケイジ(ニコラス・ケイジ)は俳優を辞めようとしていた。そんな折、彼に大富豪ハビの誕生パーティーに出席すると100万ドルになるオファーが舞い込む。
 なんとハビはニックの熱狂的すぎるファンだった。だが、ニックはCIAからハビが犯罪組織のボスだと教えられ、さらにはスパイとして協力を要請されてしまう。しかし、ニックがCIAの手先だと知らされたハビは彼に銃口を向ける。「殺したくない」「俺もだ」「愛してる」「俺だって」というやりとりも予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。予告編を見る感じでは銃撃アクションもありながら、どこかポップな感じで展開するような印象があります。友達を取るか、国家を取るかを選ぶか、というニックの選択を見届けましょう。
 このどこかポップな雰囲気からすると、最終的にはニックがハビを説得することで犯罪組織は解体され、さらに大きな組織の犯罪の証拠がCIAにもたらされたことで、ハビには情状酌量がつきます。彼が刑務所から出てくると再びスターに返り咲いたニックが「俺のマネージャーやらないか?」と声をかけるハッピーエンドではないでしょうか?

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『マッシブ・タレント』
3月24日(金)より新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、グランドシネマサンシャイン 池袋、アップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー
配給:フラッグ
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文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

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