もやもやレビュー

カンヌ監督賞受賞作『別れる決心』

『別れる決心』 2月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

本作の監督であるパク・チャヌク監督は、『オールド・ボーイ』で第57回カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得し一躍有名になった。作品は残虐な描写が多くトラウマ級のものばかり。監督はサスペンスと呼ばれるジャンルが得意のようだが、見せ方が作品によってがらりと変わり毎回驚かされる。2016年に『お嬢さん』を鑑賞した時、余韻があまりにもすごく椅子からなかなか立ち上がる気持ちになれなかったのを今でも覚えている。そして、心の底から1人で観て良かったと思った作品でもある。なんとも言えないエロスに言葉がしばらく出てこなかった。たくさん映画を観ていても、類似する作品が簡単には出てこないような新鮮さがあり、結局、監督の新作と聞いてみないわけにはいかなくなっている。

監督の今までの作品のエロやグロを思い出すと、今回の作品もどんなタイミングで観ようか悩むほどだった。
ところが、本作エロもグロもほとんどない。まさかの心理的にじわじわとくる作品だった。監督の前作までの作風のエロやグロを待ち望んでいた人達からしたら、もしかしたら物足りなささえ感じるかもしれないと鑑賞直後は思ったが、何日たっても忘れられないラストの展開。やっぱり新しい衝撃を私は受けていたのだとじわじわと噛み締める。

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そんな本作のあらすじは......男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュン(パク・ヘイル)と、被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)が捜査を通してに出会う。取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がってくる。いつしか刑事ヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたへジュンに特別な想いを抱き始める。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く"愛の迷路"のはじまりだった......。

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簡単に言ってしまえば刑事と被疑者の妻という、立場の交わるはずのない2人の運命はどうなるのか?というストーリーになってくるのだがそう簡単にいくはずもない。
結局、恋愛ってタイミング。そのことを、台詞ではなく作品の中にある空白の時間から観ている観客に伝えることができる、まるで魔法のような技法をいくつも持っている作品になっている。さすがカンヌで監督賞を受賞しているだけのことはある!と納得出来る作品なので、ぜひ細かい仕草まで劇場で楽しんでほしい。

(文/杉本結)

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『別れる決心』
2月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

監督:パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンビョ
配給:ハピネットファントム・スタジオ

原題:Decision to Leave
2022/韓国/138分
公式サイト:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/
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