もやもやレビュー

胸の奥深くをざわつかせる『死を告げる女』

『死を告げる女』 12月23日(金)シネマート新宿ほか全国順次公開中

本作を鑑賞して一番に感じたのは、韓国映画を観たのにJホラーを観たようなゾクゾク感。初めて『リング』を見た時に貞子に対して抱いた感情に似た何かが、胸の奥深くをざわつかせる作品だった。

生放送5分前、テレビ局の看板キャスター・セラ(チョン・ウヒ)のもとに「殺される」と死を予告する情報提供電話がかかってくる。いたずら電話として片づけるには気が重いセラ。スクープを掴むチャンスだという母ソジョン(イ・ヘヨン)の言葉に背中を押され情報提供者の自宅に向かうと、そこで情報提供者のミソと彼女の娘の遺体を発見する。その日以来、事件のことが忘れられず取材を続けるセラは、事件現場でミソの主治医だった精神科医イノ(シン・ハギュン)に会い、彼に対する疑いが深くなっていく......。

shiwotsugeru_sub01.jpg

序盤から感じる恐怖。そこには顔の見えない、だけど姿は確かにある正体不明の何かが存在した。生きているのか、死んでいるのかそれさえもよくわからない恐怖心を持ちながらも、解消するにはとにかく最後までみるしかないのがホラー映画。
ホラーでありながらどこか謎解きのような要素もあってぐいぐいと作品に引き込まれるサスペンス・スリラーとなっている。

shiwotsugeru_sub03.jpg

キャリアウーマンが抱える仕事と家庭の両立の難しさや、妊娠に対する考え方を作品の主軸としているのが現代的な一方で、普遍的なテーマでもある。その点も特に印象的な作品だった。

主人公セラを演じたチョン・ウヒの代表作に『サニー 永遠の仲間たち』、『哭声/コクソン』があるが作品ごとに個性的な演技を見せてくれる。
また彼女の違う一面が本作では見れたように感じた。今後も追いたい女優の一人だ。

(文/杉本結)

***
shiwotsugeru_sub02.jpg

『死を告げる女』
12月23日(金)シネマート新宿ほか全国順次公開中

監督・脚本:チョン・ジヨン
出演:チャン・ウヒ、シン・ハギュン、イ・ヘヨン、チャ・レヒョン、ナム・ムンチョル、パク・ジヒョン
配給:クロックワークス

英題:THE ANCHOR
2022/韓国/111分
公式サイト:https://klockworx-asia.com/anchor/
© 2020 ACEMAKER MOVIEWORKS & INSIGHT FILM All Rights Reserved.

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム