人生を見失い、宗教と出会う『ザ・マスター』

　第二次世界大戦後のアメリカを舞台に、宗教にハマっていく人々を描いた映画『ザ・マスター』。主演は、近年『ジョーカー』の演技が高く評価された実力派俳優のホアキン・フェニックスが務めていて、本作もこれまた彼の驚きの即興演技が見られる作品となっています。

　ホアキン・フェニックスが演じるのは、戦争から帰還した海軍の退役軍人フレディ。戦後の社会に適応できず苦しむフレディは、アルコール依存症から抜け出せず、カメラマンとして働き始めるものの、客と喧嘩し解雇されてしまいます。そんなある日、酔っ払いながらある船に潜入。その船で「ザ・コーズ」という宗教団体の指導者のランカスターに出会ったフレディは、彼の思想や独自のメゾットに触れ、そのカリスマ的リーダー性に魅了されていきます。

　ホアキンが『ジョーカー』で冷蔵庫の中に入っていくシーンは即興演技だったことで有名ですが、本作でも彼はあっと驚く即興演技を披露。IMDbによると、フレディが刑務所に入れられ、怒りを抑えられずに暴れるシーンがあるのですが、その演技もホアキンの即興。なんと暴れすぎて、トイレを壊してしまうのです。ちなみにホアキンはトイレを壊す意図はなかったし、トイレを壊すことができるとも思っていなかったそう。

　そんな彼の演技に圧倒され続ける本作、モデルとなったのはトム・クルーズなどが入信しているサイエントロジーの創始者という情報も。宗教がどのように人を魅了していくのか、そしてどのように人を壊していくのか、そんな触れてはいけないようなトピックを赤裸々に描いた本作。「問題作」と言われる理由がエンドロールの頃に十分理解できると思います。

（文／トキエス）