クズ男なのに愛おしい『もっと超越した所へ。』
『もっと超越した所へ。』 10月14日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
映像化不可能と言われていた舞台がまさかの映画化!
4つの部屋に4つのカップル。どのカップルも、ダメンズを捕まえた女性たちがそれぞれに抱える問題の壁にぶつかり発狂する。そこから、まさかの展開に発展していくのが見どころとなっている。
本作に出てくる4カップルはこれからの社会で増えていくであろうカップルの姿であるように思えた。
本作に登場する1人目のダメンズ、働かない稼ぎの少ないYouTuberは今後増加しそうなダメンズだ。かっこよくて話もうまくて甘え上手なズルい男を菊池風磨が演じている。甘えられるとゆるしちゃう彼女を前田敦子が演じている。
2人目のダメンズ、将来のことを考えず今が楽しければOKというタイプはいつの時代も一定数いそうなダメンズだ。オカモトレイジと伊藤万理華カップルが楽しいノリでガンガン攻めてくるので何度も笑わせられた。
3人目の承認欲求が強く自己中心的な人間、これもSNSの普及もあってそれなりにいそう。真面目な人ほど陥りやすそうな、本作で一番アダルトなシーンも多いカップルを三浦貴大と黒川芽衣が熱演。
4人目のジェンダーの問題を含むタイプ、どちらの性も愛せるって難しい問題だなと思った。これから考えることも増加しそうな繊細な問題でもあるが、本作では深刻にはなりすぎない軽やかな演技で千葉雄大と趣里が描ききっていたように感じた。
どのダメ男も共通点として相手の気持ちを考えられず、自己中心的な意見を押しつけてくる傾向にある。そして、女性も不満を蓄積させながらも受け入れてしまうので男性が調子にのっていく描写もリアルだった。
女性が不満を爆発させたあとからが本作の最高の見どころである。最近劇場公開前に映画の冒頭部分をYouTubeで見られる作品が増加しているが、本作の場合、冒頭では魅力を伝えきれないとあえて見せないことにしたそうだ。
確かにゆっくりと助走してボルテージを徐々に上げていくような作品となっている。ラストシーンがはまるかどうかが鍵にはなりそうだが、今までの映画体験では味わったことのない作り込みかたで表現方法の多彩性が光る作品だった。
(文/杉本結)
『もっと超越した所へ。』
10月14日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督:山岸聖太
出演:前田敦子、菊池風磨、伊藤万理華、オカモトレイジ、黒川芽衣、三浦貴大、趣里、千葉雄大
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2022/日本映画/119分
公式サイト:https://happinet-phantom.com/mottochouetsu/
©2022『もっと超越した所へ。』製作委員会