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友情に飢える女性と、愛に飢える女性『あるスキャンダルの覚え書き』

あるスキャンダルの覚え書き (字幕版)
『あるスキャンダルの覚え書き (字幕版)』
Cate Blanchett,Judi Dench,Bill Nighy,Richard Eyre
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 名女優のジュディ・デンチとケイト・ブランシェット。そんな2人の演技が光る映画『あるスキャンダルの覚え書き』を今回はご紹介。本作は、アメリカで実際にあったメアリー・ケイ・ルトーノー事件がモデルとなっており、未成年の学生と関係を持ってしまった女教師と、その女教師に以上な執着を見せるベテラン教師の"ヒトコワ"物語が描かれています。

 ある中学校のベテラン教師、バーバラ。問題児ばかりの学校で彼女は生徒に厳しい態度をとり、必死に秩序を守っていました。ある日、バーバラが働く中学校に新米教師のシーバがやってきます。美しいシーバは美術を担当し、他の先生からも瞬く間に人気を博します。シーバも密かにバーバラとの友情を育みたいと望むようになり、彼女と親しくなっていきます。しかしある日、バーバラはシーバが15歳の生徒スティーヴンと体の関係を持っているところを目撃。シーバはバーバラに「黙っていてほしい」と懇願しますが、バーバラはその"スキャンダル"を利用して、シーバにとって唯一無二の友人になろうと考えます。

 本作ではバーバラの心の声がよく表現されているのですが、彼女はシーバに対して純粋に友人になりたいという思いではなく、嫉妬や憎しみのような複雑な思いと、憧れの思いを兼ね備えた複雑すぎる心情を持っているのです。バーバラは、シーバに対して"貸し"をどんどんと作っていく。しかし、自分が支えた分、相手が時間をとってくれないと激怒するという不安定なキャラクターなのです。

ちなみに、2人の喧嘩のシーンはとっても強烈。バーバラ演じるジュディとシーバ演じるケイトは、喧嘩のシーンを撮影する不安と緊張から、シーンの終わりのために、シャンパンボトルを持参したそう。シーン撮影後に2人はほとんどボトルごと飲み干し、お祝いしたのだとか。これまでも数々の話題作に出演している2人を、ここまで緊張させたその過激すぎる喧嘩シーンに注目。そしてバーバラとシーバの奇妙な友情がどのようになっていくのかも、ぜひ見届けてください。

(文/トキエス)

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