もやもやレビュー

どこか不気味だけど見てしまう。『LAMB/ラム』

『LAMB/ラム』 9月23日(金・祝)より新宿ピカデリーほか全国公開中

話題作を次々と世に送り出す気鋭の製作・配給会社「A24」が北米配給権を獲得し、カンヌ国際映画祭で上映されるやいなや観客を騒然とさせた衝撃の話題作がついに日本上陸!

ある日、アイスランドで暮らす羊飼いの夫婦が羊の出産に立ち会うと、羊ではない"何か"の誕生を目撃する。2人はその存在をアダと名付け育て始めるが----。

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冒頭はとにかくセリフのない作品。静けさの中に観客をおき、これから起こるであろう何かを待ち構えるような気持ちへと観客の心理を誘導しているかのよう。そして、これから起こる全てを見守る者という座席にいつの間にか座らされている。
不思議なことが起こるのにその世界の中に自分も置かれているような気持ちになる。

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作品を見る前に、聖書で「羊飼い」「羊」「子羊」「ヤギ」が一体何を表しているのかを理解した上で見ることをおすすめしたい。
知って見るのと知らずに見るのでは作品の理解度が大きく変わるだろう。

「羊飼い」:聖職者
「羊」:キリスト教信者
「山羊(ヤギ)」:キリスト教信者ではない人
「子羊」:イエス
「犬」:汚い者

羊飼いの夫婦は、亡くなった子どもの生まれ変わりかのように羊から産まれた不思議な何かを育てるのだが、少しずつ成長して子羊が洋服を着て歩いている姿は可愛い。
違和感を感じているはずなのに、どこかキュートなその姿にスクリーンを見つめる顔も少し緩んでしまう。

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少し不気味で心の中に違和感を感じているのに、もう少し先の見てはいけないであろう何かを知りたくなる、そんな作品だった。

(文/杉本結)

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『LAMB/ラム』
9月23日(金・祝)より新宿ピカデリーほか全国公開中

監督:ヴァルディミール・ヨハンソン
出演:ノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グズナソン、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン
配給:クロックワークス

原題:LAMB
2021/アイスランド・スウェーデン・ポーランド/106分
公式サイト:https://klockworx-v.com/lamb/
©︎ 2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON

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