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大注目アニメ製作会社の最新作『夏へのトンネル、さよならの出口』

『夏へのトンネル、さよならの出口』 9月9日(金)公開

近年、映画ファンの間で「A24の作品は必ずチェックする!」という人が増えているが、アニメファンの間で最近大注目なのが、新鋭アニメ製作会社CLAPだ。
CLAPは、『映画大好きポンポさん』を製作した会社だが、私もポンポさんにはまんまと泣かされた。そのCLAPが製作と聞いただけで、アニメ好きな私の観たい指数はぐんと上昇した。

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ウラシマトンネル----そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入る。ただし、それと引き換えに...。
掴みどころがない性格のように見えて過去の事故を心の傷として抱える塔野カオルと、芯の通った態度の裏で自身の持つ理想像との違いに悩む花城あんず。ふたりは不思議なトンネルを調査し欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶ。
これは、とある片田舎で起こる郷愁と疾走の、忘れられないひと夏の物語--

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ウラシマトンネルの中に広がる世界はとても綺麗で息をすることを忘れてしまうほど。そこにあるすべてに手が届きそうで、でも触ったら何が起こるかわからない儚さや脆さ、危うさをもっているような空気感。それが、足元に水があることでより信憑性をもって表現されていたように感じた。
私たちが現実にこのような世界を体感するとしたら、チームラボの世界観がとても似ているかもしれない。

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思春期の少年少女の抱える過去への後悔や未来の自分への不安がとても共感しやすかった。「もしも願いが叶うなら」という誰しもが考えたことのあるテーマが題材になっていることで、作品の世界に入り込みやすくなっているのだろう。
鑑賞後、もしも本当にウラシマトンネルが身近にあったら入る?入らない?なんて話題で盛り上がるのも楽しそうな作品だった。

(文/杉本結)

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『夏へのトンネル、さよならの出口』
9月9日(金)公開

監督・脚本:田口智久
原作:八目 迷「夏へのトンネル、さよならの出口」(小学館「ガガガ文庫」刊)
声の出演:鈴鹿央士、飯豊まりえ、畠中 祐、小宮有紗、照井春佳、小山力也、小林星蘭 ほか
アニメーション制作:CLAP
配給:ポニーキャニオン

2022/日本映画/83分
公式サイト:https://natsuton.com
Ⓒ2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

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