もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2022年10月号

映画『もっと超越した場所へ。』(10月14日公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊妄想かわら版』十四回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
10月公開の映画からは、この四作品を選びました。

***

『千夜、一夜』(10月7日公開)
公式サイト:https://bitters.co.jp/senyaichiya/#
予告編:https://youtu.be/1WfS0ZdblvE

main.jpg 失踪した夫を30年間待つ女を描いた久保田直監督作『千夜、一夜』。北の離島の港町でいなくなった夫を待ち続ける登美子(田中裕子)、彼のことをいい加減に諦めて自分と一緒になろうと伝える知り合いの藤倉(ダンカン)。ある日、2年前に夫の洋司(安藤政信)が失踪してしまった奈美(尾野真千子)が登美子の元に現れる。
「帰ってこない理由なんかないと思ってたけど、帰ってくる理由もないのかもしれない」と登美子が奈美に話しているシーンも予告編で見ることができます。そして、失踪していた奈美の夫が登美子の前に現れるのだが...。
 ここからは妄想です。予告編で奈美が再会した洋司の頬を張り、登美子に「なんで連れてきたんですか? 若松さん、夢の中にいるのに」という場面があります。なぜ洋司は登美子がいる港町に現れたのでしょう。よく見てみると舞台は佐渡島のようです。予告編には流れついた船のようなものも映るので、もしかすると北朝鮮と行き来していた密航船かもしれません。洋司は海外に逃亡しようとして島を訪れた可能性も考えられます。
 登美子は夫が海外に逃げた可能性を考えながら生きてきたのかもしれません。そうやって、彼が生きていると信じることが奈美の言う「夢の中」ということかもしれません。最後は彼女も島から姿を消す、そんなラストシーンではないでしょうか?

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『千夜、一夜』
10月7日(金)よりテアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開
配給:ビターズ・エンド
©2022映画『千夜、一夜』製作委員会

『もっと超越した場所へ。』(10月14日公開)
公式サイト:https://happinet-phantom.com/mottochouetsu/
予告編:https://youtu.be/H9QtPCpb6N0

main_真知子&怜人2ショット.jpg 劇作家・根本宗子の「映像化不可能」と言われた舞台を星野源の映像作品に数多く携わっている山岸聖太監督によって映画化した『もっと超越した所へ。』。真知子(前田敦子)と怜人(菊池風磨)、美和(伊藤万里華)と泰造(オカモトレイジ)、七瀬(黒川芽以)と慎太郎(三浦貴大)、鈴(趣里)と富(千葉雄大)の四組の男女たち。四人の女性たちがそれぞれに「泣いてないで早く出ていってよ」と言うと、その相手の男たちがドアから出ていこうとするシーンを予告編で見ることができます。
 真知子たちが付き合った、関係を持った彼らは「全員クズ男」のようです。そんなダメな男にハマった彼女たちはただ幸せになりたいだけなのに、なぜそうなってしまうのか?
 ここからは妄想です。予告編には「なんでこんな人を好きになっちゃうんだろう」というテロップが出てきます。彼女たちは胸に抱えたものをいつも出さずにいたように見えてきます。
 映画では別れる時やそのあとにその感情を爆発させているようです。その場面での彼女たちはより人間らしく見えるので、ただの男女の恋愛というよりもひとりの人間として向き合いたいという気持ちの発露のようです。四組の中でひとりの人間として向き合う決心ができる男性がいた女性だけが復縁するラストかもしれません。

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『もっと超越した場所へ。』
10月14日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2022『もっと超越した所へ。』製作委員会

『アフター・ヤン』(10月21日公開)
公式サイト:https://www.after-yang.jp/
予告編:https://youtu.be/zgy8AgWaqJ0

『アフター・ヤン』メインスチール.jpg 映画制作・配給会社「A24」×音楽・坂本龍一×コゴナダ監督による『アフター・ヤン』。近未来、AIロボットのヤンは夫のジェイク、妻のカイラ、中国系の養女のミカという家族の一員として暮らしていた。
 ある日、急に動かなくなってしまったヤンを修復してもらおうとするが、それは不可能だと言われてしまう。そして、ヤンの記録映像が収められたデータをもらったジェイクは、そのデータを見ることで知らなかった彼の一面を知ることになる。以前にジェイクは「君は幸せか?」とヤンに聞き、「その感覚は分かりません」と答えているシーンも予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。ヤンのデータには家族も知らなかった、彼がある若い女性のエイダと親しくしていた様子も予告編で見ることができます。ヤンはエイダに恋心を抱いていたのでしょうか? あるいはロボットだったヤンは彼女に出会うことで感情が生まれて人間になりたいと望むようになったのでしょうか? 
 だとすれば、ロボットだった彼の内面に心が生まれたということになります。人間のようになろうとしたことで彼の中のAIシステムがバグを起こして壊れてしまった可能性もあります。将来科学者になったミカがヤンを再生させるというラストもありえるかもしれません。

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『アフター・ヤン』
10月21日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給:キノフィルムズ
©2021 Future Autumn LLC. All rights reserved.

『君だけが知らない』(10月28日公開)
公式サイト:https://synca.jp/kimishira/
予告編:https://youtu.be/XwOHNAqvz1w

『君だけが知らない』メイン.jpg 『サイコだけど大丈夫』で日本でも有名になったソ・イェジ主演×『八月のクリスマス』などの助監督を務めてきたソ・ユミン初監督作『君だけが知らない』。事故に遭って記憶を失ったスジン(ソ・イェジ)、唯一の家族である夫のジフン(キム・ガンウ)の献身的なサポートで回復へ向かっていく。二人はカナダに移住することが決まっていた。
 ある日、スジンに見えた幻覚が実際に目の前で起きてしまう。医師からは「デジャビュ」であると言われるのだが...。幻覚か未来予知なのか、そしてスジンが失った本当の記憶や真実とは一体どんなものなのか?
 ここからは妄想です。予告編では白骨死体や謎の錠剤、建物から落ちていく人物などから物語は一気にサスペンスへ展開していくようです。また、予告の最後には「そして、すべてが逆転する」というテロップがあります。スジンの夫のジフンが実は夫ではなく犯罪者であり、彼女を殺そうとしたものの失敗し、記憶を失ったことを知って、本当のことを隠して人質のようにカナダに連れて行こうとしている、そんな可能性もありそうです。
 あるいは、白骨死体などの事件のすべての犯人がスジンであり、そのことを忘れてしまっていた彼女が真実を知ってしまうという主人公が真犯人というバッドエンドかもしれません。

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『君だけが知らない』
10月28日(金)全国公開
配給:シンカ
©2021 CJ ENM. All Rights Reserved.


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」連載中です。

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