もやもやレビュー

少年の心の叫び『ぜんぶ、ボクのせい』

『ぜんぶ、ボクのせい』 8月11日(木・祝)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

ヒリヒリするほど突き刺さる作品だった。

児童養護施設で暮らす13歳の中学生、優太(白鳥晴都)は、施設でも学校でもいじめられていた。母・梨花(松本まりか)が迎えに来てくれることだけを心の支えに毎日を過ごしているが迎えに来ることはなく拒絶される。
当てもなく辿り着いた海辺で、軽トラで暮らすホームレスの男・坂本(オダギリジョー)に出会いわずかな金銭を稼ぎながら寝食をともに過ごすようになる。
坂本の元を訪れる裕福な少女・詩織(川島鈴遥)とも顔見知りになり、優太は自分と同じ寂しさを抱えながらも心優しい詩織に惹かれていく。しかし、そんな穏やかな日々もある事件によって終わりを告げる。

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映画を観ながら常に考えるのは、『もしもー』と、過去が違っていれば今はこんなことにならなかったのではという別の展開への願望。だからこそ本作のエンディングテーマ『夢で逢えたら』が絶妙にマッチする。

優太、坂本、詩織の3人の生い立ちは全く違うけれど、望む未来への希望みたいなものが同じ方向にあるから自然と出逢い、同調し、惹かれていったように感じた。

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自分のことを理解してくれる人がいないと子ども心ながら感じることは孤独を生み出す。
子どもが生きるテリトリーはまだまだ狭く、その中ではみつけることは難しいのかもしれない。だけど、視野を広げていけば意外なところに理解者は現れることもあるのではないだろうか?そんなことを感じる少年とホームレスの中年との出会い。
きっと施設にずっといたら出会うことさえできなかった。坂本は善人ではないし優太もそれがわからないほど子どもではない。だからといって善悪の区別をつけていい子に生きていく環境下にもなかった。
出逢いと別れは生きていれば必ずある出来事。だけど13歳が受け止めるには本作でおきる全ての出来事が辛く悲しい。

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本作はかなり重いテーマの作品であるが目を背けてはいけない問題であることは確かだった。最後に優太が発した言葉の重みが今も胸の奥をざわつかせる。
一度見たら忘れることはない力作だ。

(文/杉本結)

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『ぜんぶ、ボクのせい』
8月11日(木・祝)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

監督・脚本:松本優作
出演:白鳥晴都、川島鈴遥、松本まりか、若葉竜也、仲野太賀、片岡礼子、木竜麻生、駿河太郎/オダギリジョー
配給:ビターズ・エンド

2022/日本映画/121分
公式サイト:https://bitters.co.jp/bokunosei/
©️ 2022『ぜんぶ、ボクのせい』製作委員会

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