もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2022年6月号

『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』(6月10日公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊妄想かわら版』十回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、こんなご時世ですが映画館で観てもらえたらうれしいです。
6月公開の映画からは、この四作品を選びました。

***

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(6月3日公開)
公式サイト:https://g-doan.net/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=foKTPw-aJnA

メイン.jpg 『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙』から40年、安彦良和監督によってスクリーンで復活する『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』。極秘作戦のためにとある無人島に降り立ったアムロ・レイ、そこに潜伏していたザクとの戦闘でガンダムを失ってしまう。そして、その島には多くの子供たちとククルス・ドアンと名乗る謎の男がいた。
「君はこの子供たちのために戦えるか」と元ジオン軍であるククルス・ドアンがアムロに聞き、彼が「うん」と答えているシーンを予告編で見ることができます。ザクに乗ったククルス・ドアンと再びガンダムに乗ったアムロはジオン軍から子供たちを守る戦いに向かっていくことになるようです。
 ここから妄想です。と言っても『機動戦士ガンダム』テレビシリーズ第15話のリメイク作品である今作は、往年のファンからすればネタバレもなにもないものでしょう。安彦監督は対談で「ガンダムの映像を作るのは本作が最後となる」と述べているようです。アムロ役の古谷徹さんなど一部のテレビシリーズからのオリジナル声優キャストの方々が出演している今作はある意味で同窓会であり、最後のお別れのような気持ちがあるのかもしれません。だからこそ、新旧ファンはぜひ劇場に足を運んでほしいです。

sabu01.jpg『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』
6月3日(金)全国ロードショー
配給:松竹ODS事業室
©創通・サンライズ


『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』(6月10日公開)
公式サイト:https://moviola.jp/fabian/#
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=Dwf3ouarwK8

メイン.jpg 『飛ぶ教室』などで知られる児童文学作家エーリヒ・ケストナーの唯一の大人向け長編小説を映画化した『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』。ナチスの足音が聞こえ始めてきた1931年、作家を目指して狂躁の街ベルリンにやってきた青年のファビアン、野心に燃えるたった一人の親友、そして女優を目指す恋人、三者三様の夢と希望、そして絶望。彼らは暗い時代の訪れを前に何を選ぶのか、あるいは翻弄されてしまうのかという内容のようです。
「前進しよう。我慢せずに行動を起こせ。野心がないのか?」と親友に発破をかけられているファビアンの姿も予告編で見ることができます。しかし、予告編では怒りで相手の男性に殴りかかる姿などどこか破滅に向かっていきそうな予感を感じさせます。
 ここからは妄想です。やはりタイトルに「さよなら」とあるので、ラストには親友と恋人を失い、ナチスが次第に勢力を増していくベルリンからファンビアンは去っていくのでしょう。その意味でこの物語は世界が大きく変わる中で、不安と希望がないまぜになった青年。当たり前だった日常が嫌でも変わっていく、特定の時代ではなくいつの時代にもそれは起きています。第二次世界大戦後に諸外国に逃げていたファンビアンが瓦礫のベルリンに戻ってくるというラストかもしれません。

サブ1.jpg『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』
6月10日(金)よりBunkamuraル・シネマ他全国順次公開
配給:ムヴィオラ
© 2021 LUPA FILM / DCM Pictures / ZDF / Arte

『メタモルフォーゼの縁側』(6月17日公開)
公式サイト:https://metamor-movie.jp
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=A1OEoOlIbac

main.jpg 「このマンガがすごい!」など数々の漫画賞を受賞した『メルモルフォーゼの縁側』の実写映画化。BLをこっそり夜に読むのが好きな女子高生のうらら(芦田愛菜)とひとり暮らしの老婦人の雪(宮本信子)、とても交わるようにも見えない年の差58歳の二人。しかし、書店でバイトをしているうららに「こんなにワクワク久しぶり。あなたも好きなの? ボーイズラブ」と雪が聞いたことから交流が始まっていく。「私ね、ずっと誰かと漫画の話をしたかったの」「私も漫画の話したかったんです」と二人が家の縁側で座って、うれしそうに話しているシーンも予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。予告編ではうららが内に秘めていた「自分も漫画を描いてみたい」という気持ちを雪が後押して、描き始めるというシーンもあります。まさに「最初の青春、最後の青春」というコピーがぴったりな作品のようです。こういう場合には背中を押す人がいなくなったり亡くなることで、背中を押された側は成長したり夢をつかむというのが王道なパターンがあります。しかし、この作品では雪が最後に亡くなって、BL漫画家になったうららというラストシーンではないはずです。きっとうららが描いた漫画を雪とうららが縁側で一緒に読んでいると素敵なラストシーンしか浮かびません!

sub1.jpg『メタモルフォーゼの縁側』
6月17日(金)全国公開
配給:日活
©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

『神は見返りを求める』(6月24日公開)
公式サイト:https://kami-mikaeri.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=dc4JA7sla7U

メイン.jpg 『ヒメアノ〜ル』『空白』などを手がけた吉田恵輔監督による『神は見返りを求める』。底辺YouTuberのゆりちゃん(岸井ゆきの)は、撮影を無条件で手伝ってくれる優しい中年男の田母神(ムロツヨシ)と出会う。「俺は見返り欲しさにやってるわけじゃないから」という田母神。そんな彼といい仲になっていきそうな雰囲気のゆりちゃんだったが人気YouTuberと知り合ったことで、「田母神さんのセンスはちょっと古いのかな」と言い出します。また、諦めにも怒りにも似た表情の田母神の姿を予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。本当はゆりちゃんからの見返りが欲しかった田母神が復讐者のようになっていくのが予告編でも見ることができ、ほんわかとしたラブストーリーのようなものではなく、ある種の愛憎劇のようになってく作品のようです。
 ゆりちゃんと田母神が互いのスマホで相手を撮影している様子などもあり、その動画もアップしそうです。それでお互いに注目されて人気YouTuberになるのかもしれません。そして、ゆりちゃんは人気YouTuberという夢を叶え、田母神はある種ストーカーや犯罪者のように彼女のファンたちから扱われていっていく。そしてゆりちゃんのファンから命を狙われて、最後に殺されるというバッドエンドなラストシーンかもしれません。

サブ①.jpg6月24日(金)公開
配給:パルコ
©2022「神は見返りを求める」製作委員会


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」連載中です。

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