もやもやレビュー

魂の叫びを体感せよ!『犬王』

『犬王』 5月28日(土)全国ロードショー

これはただのアニメーション映画ではない。
アニメーションであるはずなのに、鑑賞後の気持ちはロックフェス帰りかのよう。映画館で体を揺らす人がいたとしても仕方がない。それほど自然に体が揺れ、心が揺らされる。踊り出したくなるような作品。

平家物語の中の一節より古川日出男が大胆な解釈でストーリーを紡いだ小説『平家物語 犬王の巻』を『夜は短し歩けよ乙女』の湯浅政明監督が映像化した。
異形の能楽師・犬王(アヴちゃん)と盲目の琵琶法師・友魚(森山未來)。室町時代の都で出会った2人の若者が、伝統芸能の常識を打ち破るパフォーマンスを次々と披露し、新時代のポップスターとして民衆を熱狂させた。

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「能楽」という世界最古のミュージカルの豊かな可能性を無限大にして表現したのは、声優として抜擢されたアヴちゃんと森山未來の表現力あってこそ!
筆者10年以上森山未來の舞台を追いかけている。テレビではあまりみることはないが、舞台での歌唱力は素晴らしいものである。
それがついに映画館で存分に本領発揮している。姿はみえない。声だけのはずなのにそこにはキャラクターとまるでシンクロしている彼をみたような不思議な感覚だった。

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今回、世界で活躍する女王蜂のアヴちゃんと森山未來がタッグを組んだことで、平家物語の世界が今まで観てきた悲愴感ただようイメージとは全く異なったポップでワクワクする世界となっている。
能楽の舞台が二階建てになっていて上下階に交互にスポットライトが次々にあたるシーンでは観劇しにきた観客になったかのような疑似体験ができる。
映画館をあとにする時、ライブ会場から帰る気分になれる一作!

(文/杉本結)

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『犬王』sub1.jpg

『犬王』
5月28日(土)全国ロードショー

監督:湯浅政明
原作:「平家物語 犬王の巻」古川日出男著(河出文庫刊)
声の出演:アヴちゃん(女王蜂)、森山未來、柄本佑、津田健次郎、松重豊
配給:アニプレックス、アスミック・エース

2022/日本映画/97分
公式サイト:https://inuoh-anime.com
©2021 "INU-OH" Film Partners

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