『月刊予告編妄想かわら版』2021年11月号
『皮膚を売った男』(11月12日公開)より
毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊妄想かわら版』三回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、こんなご時世ですが映画館で観てもらえたらうれしいです。
11月公開の映画からはこの四作品を選びました。
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『ボクたちはみんな大人になれなかった』(11月05日公開)
公式サイト:https://bokutachiha.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=g6mIp7YjjaE
燃え殻のデビュー小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』を映画化し、劇場だけでなNetflixでも全世界配信される今作。物語は1995年から2020年までの25年を描き、予告編ではノストラダムスの大予言のテレビ番組が出たり、小沢健二の曲が流れたり、ハデなクラブでのパーティーの様子を見ることができます。
若き主人公のボク(森山未來)が「WAVE」の袋を持ってラフォーレ前に行くと、同じロゴの入った袋を持っている彼女(伊藤沙莉)がいます。二人でお茶をしている時にボクは彼女から「おもしろいと思う」と言われる姿もあります。付き合い出した彼らのデートの様子などもありますが、「今度CD持ってくるからね」と言ったまま、彼女は彼の前から消えてしまうようです。
ここからは妄想です。ワープロ画面に「君は大丈夫だよ。おもしろいもん。」という言葉が出てくる場面が予告編にあります。彼女からだと思えるこの言葉が彼を奮い立たせ、生きる原動力になっていたはずです。そして、会えなくなってしまったことで、彼女との思い出や日々の出来事が現在のボクを未だに呪縛しているようにも見えてきます。テロップに「すべてが今の自分に繋がっている」とあるように、現在過去未来の自分や世界を肯定するために、世界を呪わないための再生の物語になっているのではないでしょうか?
11月5日(金)より、シネマート新宿、池袋シネマ・ロ サ、アップリンク吉祥寺ほかロードショー&NETFLIX全世界配信開始!
配給:ビターズ・エンド
©2021 C&I entertainment
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『皮膚を売った男』(11月12日公開)
公式サイト:https://hifu-movie.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=6eSjcSgvlUY
アート作品になった男の数奇な運命を描いた『皮膚を売った男』。国に帰ることも海外に逃げることもできなくなったシリア難民の男・サムが世界的アーティストの芸術家と出会う。芸術家がサムにもとめたのは彼の背中だった。
「背中にタトゥーを入れるとその背中はアート作品となり、世界中を移動できることになる」とナレーションと共に、サムの背中に「VISA」という文字と絵柄のタトゥーが入られる様子を予告編で見ることができます。アート作品となった彼はずっと会えなかった恋人と再会します。彼はアートになったことで恵まれた側の人間になれたのでしょうか?
ここからは妄想です。予告編ではテロリストらしき人物たちに全頭を隠す黒いマスクを被されて銃口を向けられている場面もあります。アートになることで逆説的に国境を越えた彼は、紛争が起きている故郷に帰り、世界的に価値のあるアートでもある自分自身を使ってテロ組織を挑発したのかもしれません。
また、アートの価値とはなにか? と問いかけ、そして、人間が決める価値観や世界観を覆そうとしている物語のようにも見えます。もしかすると、最後には背中に「VISA」と掘ってアートになっている彼は、自分自身を人ではなく、国家として捉えて、人々の価値観すら覆すそんなラストかもしれません。
11月12日(金)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国公開
配給:クロックワークス
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『COME & GO カム・アンド・ゴー』(11月19日公開)
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/comeandgo
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=kax58Yo-ttY
現在は大阪を拠点に活動している映像作家のリム・カーワイ監督作『COME & GO カム・アンド・ゴー』。大阪のキタにある木造アパートで白骨化した老婆の死体が見つかり、警察はこの狭い地域の中で事情聴取のために色んな人に話を聞き始めます。
「あまり見かけない連中がこの辺の土地のことであるとか」と刑事(千原せいじ)がカフェ店主に聞いているように、ここには中国、台湾、韓国、マレーシア、ネパール、ミャンマー、ベトナムという様々な国かたやってきた人たちが住んでいるようです。それぞれの国からやってきた登場人物の物語と、日本人登場人物(兎丸愛美や渡辺真起子など)の人生が交差していく群像劇になっているのが予告編を見るとわかります。
ここからは妄想です。予告編では観覧車を見て泣いている若い女性や、クラブで急に一緒に飲んでいた男たちを殴りだす男性、川沿いで友情を確かめ合う男性二人などが見られ、それぞれの人物の感情が大阪の夜に悲しくもきらびやかに放たれていくようです。
白骨化した老婆の捜査をしている刑事によって、登場人物たちは徐々に結び付けられていくのでしょう。海外から来たそれぞれの登場人物は別々に老婆と交流があったのかもしれません。彼女の死を知ることで、自分の人生を見つめ直し、この街に留まるのか、出ていくのかを決めるそんなラストではないでしょうか?
配給:リアリーライクフィルムズ/Cinema Drifters
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『幕が下りたら会いましょう』(11月25日公開)
公式サイト:http://makuai-movie.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=o-YgUMdqq44&t=2s
新鋭監督・前田聖来×映画単独初出演・松井玲奈『幕が下りたら会いましょう』。実家の美容室で「この前の舞台どうだった」と妹の尚(筧美和子)が聞き、「誰かの評価のためにやってるんじゃないから」と売れない劇作家の姉の麻奈美(松井玲奈)が答える。「それって自分の力で評価されてから言うんじゃない」と姉の痛いところをついてくる妹。そんな冴えない日々を送っていた姉の元に、妹が死んだと告げる電話がかかってきます。
妹の死と向き合うために、麻奈美はかつて自分が作った『葡萄畑のアンナ・カレーニナ』を尚が作った舞台として再演しようと仲間達と共に動き始めるのが予告編で見ることができます。
ここからは妄想です。妹の作った舞台として再演するというのはどういうことなのでしょうか? それは亡くなった彼女の抱えていたものや秘密を姉が知って、尚且それを引き受けて舞台で昇華するという意味なのかもしれません。また、タイトルから感じられるのは、舞台が終わった後に妹と姉が再会するようなニュアンスがあり、予告編でも姉妹が劇場で邂逅しているような場面も見ることができます。売れっ子の劇作家になった麻奈美が舞台終わりに、大きな劇場の誰もいなくなった会場に座って拍手している尚の姿を見るというラストシーンかもしれません。
11月26日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給: SPOTTED PRODUCTIONS
©avex entertainment Inc