虚言癖の女性が行方不明者になりすます『ナンシー』
- 『ナンシー(字幕版)』
- アンドレア・ライズボロー,スティーヴ・ブシェミ,ジョン・レグイザモ,アン・ダウド,J・スミス=キャメロン,クリスティーナ・チョウ,クリスティーナ・チョウ
- >> Amazon.co.jp
2018年のサンダンス映画賞で脚本賞を受賞したインディペンデント映画『ナンシー』。ある女性が自分とそっくりな人物の写真を顔に当てている、なんとも不気味なジャケットの本作は、ハラハラドキドキのスリラーかと思いきや、重く心に突き刺さる人間ドラマでした。
主人公は、病気の母と二人暮らしのナンシー。彼女は、新しい職場で「北朝鮮に行ったことがある」と言ったり、妊婦を装ってブログを書いたりなど、虚言癖があり、嘘で他人の関心を集めていました。ある日、パーキンソン病を持つ母が就寝中に死亡。孤独を感じたナンシーは、ふとテレビのニュースに目を止めます。それは30年前に娘が失踪してしまった夫婦の特集でした。その娘の写真がどことなく自分と似ていると感じたナンシーは、夫婦について調べ、さらには写真を拡大して印刷し、自分の顔に当て、表情などを似せるため練習します。翌朝、意を決したナンシーは夫婦へと電話をかけ「自分は昔誘拐された、あなたの子供かもしれない」と告げるのです。
ナンシーの嘘はどれも"いき過ぎたもの"で、端から見るととても異常。そんな嘘をつき続けていた孤独なナンシーが、同じく孤独を抱えてきた老夫婦と交流することで生まれるドラマを描いています。不気味な雰囲気が流れる本作、中盤からはナンシーはなぜ嘘をつくのか、なぜこんな人間になってしまったのか、などを深く考えさせられる内容となっています。見る人によって、ナンシーに対する印象がそれぞれ変わる。そんな結末にも注目です。
(文/トキエス)