もやもやレビュー

自然と優しい気持ちになれる『かそけきサンカヨウ』

『かそけきサンカヨウ』 10月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー

人気作家の窪美澄が2014年に発表した短編集の中の一篇である「かそけきサンカヨウ」の映画化を、今泉力哉監督自らが切望し作り上げた作品。

今泉力哉監督の魅力は、誰の中にもある負の感情を美化することなく、だからといってドロドロとすることもなくそっと寄り添うように描き上げるところにあると思う。
監督の過去作『愛がなんだ』『mellow』『街の上で』など、どの作品も大きな出来事が起こるわけではない。自分の身近にもいるかもしれないような登場人物に、どこか親近感を持ちながらみられるのも監督の作品の魅力だ。

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今回は現代の「父と娘」「家族」の姿を中心に、高校生ならではの友情と愛情を考え葛藤する少女を志田彩良が演じる。
志田彩良と鈴鹿央士はドラマ「ドラゴン桜」でも共演していて今回もみていてほんわかとするかけあいをしている。

高校生の時に考える将来の夢や希望は手を伸ばせば届きそうで、でも届くかはわからない不安な気持ちと隣り合わせにある。そんな繊細な気持ちを自分自身の独り立ちや家族の形を考え直す瞬間としてみせてくれる。

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すべての出来事に白黒はっきりと答えを見つけなくてもいいんだよ、というメッセージがつまっているような作品だった。自分の悩みに向き合うことが出来るタイミングで向き合ったらいいんだよ、とそっと囁いてもらったかのような、優しさに包まれた気持ちになれるラスト。これからも自分の本棚に、そっと大切に持ち続けたくなるような気持ちになれた。

(文/杉本結)

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『かそけきサンカヨウ』
10月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー

監督:今泉力哉
出演:志田彩良、井浦新、鈴鹿央士、中井友望、鎌田らい樹 ほか
配給:イオンエンターテイメント

2020/日本映画/115分
公式サイト:https://kasokeki-movie.com
© 2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

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