人間は皆、支えあい生きていることを感じる『Our Friend/アワー・フレンド』
『Our Friend/アワー・フレンド』 10月15日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開中
アメリカの一流雑誌に掲載されたエッセー「友よ」を映画化。
作品を手掛けたのは、ドキュメント作品で高い評価を得ているガブリエラ・カウパースウェイト監督。
ジャーナリストのマット・ティーグ(ケイシー・アフレック)と妻で舞台女優のニコル(ダコタ・ジョンソン)は、自分の仕事とともに二人の娘の育児をこなし、慌ただしく毎日を送っていた。
ところがある日ニコルは末期がんを宣告され、闘病生活を余儀なくされることに。これによりマットは介護と育児に追い詰められ、仕事もままならない状況に陥ってしまう。
そんなとき、二人の長年の親友であるデイン・フォシュー(ジェイソン・シーゲル)が彼らの助けになることを決心する。
以前、自分が生きる希望を失いかけた際に二人の存在で救われた思いを胸に、彼はティーグ一家をサポートすべく遠方から駆け付けるのだが...。
ニコルへの病気の告知を軸に時系列がいったりきたりする作風が印象的な作品。徐々に明かされる夫婦の秘密や、親友デインがどうしてここまでこの夫婦に寄り添い助けてくれたのかなど、作品をみている中で疑問に思うことが過去の描写から明らかになり、どんどんこの3人の人柄に惹かれていった。
全てを美しく描いているのではない点が生々しくも人間らしく、親近感が湧く。知り合いにでもなったかのような距離感でみてしまった。だからこそ、ニコルが弱ったり豹変していく姿は、とても辛く悲しかった。
ダコタ・ジョンソンが2人の子供の母親役はまだ早いのでは?と思ったが、気づけば彼女も30代ということで上手くこなしていた。『フィフティ・シェイズ』のイメージからなのか、色気のある女優のイメージが強かったが、もう次の階段を登り始めていたのだと気付かされた。
ニコルを支えるマット役を演じたケイシー・アフレックは『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の時にも感じたが、どこか悲愴感の漂う切ない役どころをを演じたら、右を出る者はいないといえるほどに上手い。
涙を誘う演技を、これほどまでにナチュラルに演じられるテクニックは、持って産まれたセンスなのか、あるいは彼の役への没入度の高さからなのか。スクリーン越しでありながらも心の距離が近くに感じるからこそ、ひとつの出来事によってスイッチを押されたかのように観客の涙腺を刺激し崩壊させる。
涙する映画イコール素晴らしいとは思っていないけれど、俳優がもつ演技力があってこその涙腺崩壊現象は賞賛すべき点である。
2児の母でもある筆者は、10年後もしも自分が余命宣告されたらという気持ちで鑑賞した。いつ、なにがあるかわからないからこそ今日やれることは今日やろう!
伝えたい思いは伝えよう。やりたいことは後回しにしないで思いたったらすぐやろう!
悲しい物語だったはずなのに鑑賞後は前向きになれる作品だった。
(文/杉本結)
***
『Our Friend/アワー・フレンド』
10月15日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開中
監督:ガブリエラ・カウパースウェイト
出演:ケイシー・アフレック、ダコタ・ジョンソン、ジェイソン・シーゲル、チェリー・ジョーンズ、グウェンドリン・クリスティー
配給:STAR CHANNEL MOVIES
2019/アメリカ/126分
公式サイト:https://our-friend-movie.com/
© BBP Friend, LLC 2020