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動物の生命の重みを考える『犬部!』

『犬部!』 2021年7月22日(木)より全国公開中

題名から連想するのは『ハチ公物語』『HACHI』『クイール』などのように犬が主役のストーリーなのか?ということだろう。この物語、もちろん犬はストーリーにとても大切な役割として登場するのだが、あくまでも主人公は獣医学部の学生であり、その学生がどのような進路を選び成長したかを丁寧に描いている。

2004年頃に青森県十和田市にある北里大学(十和田キャンパス)に実在した動物愛護サークル「犬部」。この映画は「犬部」を設立した獣医学部の学生をモデルにした主人公が、仲間たちと共に動物を守ろうと奮闘した過去と、獣医師となって一人で新たな問題に立ち向かう現代という、二つの時代構成で描かれる。

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現代を主軸に、かつての「犬部」の仲間たちを再び巻き込んで、信念を曲げずに突き進むどんな状況でも諦めずに奮闘する熱血主人公・花井颯太(林遣都)。笑いあり涙ありの「命の向き合い」で、動物がカワイイだけじゃない、犬バカ、猫バカたちの熱い想いと深い感動を届ける物語である。

捨てられた犬は保健所に引き取られ、それでも引き取り手がみつからないと殺処分されてしまう。この現実は誰もが知っている。その殺処分をするのは一体誰なのか考えたことはなかった。動物を愛し獣医となった獣医師がまさかその現場に立ち会っているとは知らなかった。

また、動物の解剖の実習があるということ。確かに動物を殺してまでするべきなのかは難しい問題である(この実習については昔していたが今はしていない)。筆者自身、医療の資格をもっており(臨床検査技師)学生時代に解剖の実習をしたことがある。この経験はとても大切なものであったと今でも思い出される。机の上で勉強することとは格段に違うレベルで人間の体の構造が脳内にインプットされる。これは、手術に立ち会ったり、さまざまな角度から疾患を考えて検査をする時に今でも役にたっている。そんな経験をこの作品をみながら思い出した。

ペットを飼う時にそのペットとの別れがくる時まで自分は面倒をみることが出来るのか? 可愛いと思うだけではペットと一緒に暮らせないこと、家族の一員として迎え入れる覚悟はあるのか?考えるよいきっかけをくれる良作だった。

(文/杉本結)

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『犬部!』
2021年7月22日(木)より全国公開中

監督:篠原哲雄
原案:片野ゆか「北里大学獣医学部 犬部!」(ポプラ社刊)
出演:林 遣都、中川大志、大原櫻子、浅香航大 ほか
配給:KADOKAWA

2021/日本映画/114分
公式サイト:https://inubu-movie.jp
(C)2021『犬部!』製作委員会

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