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宇宙人を"難民"として受け入れたら『第9地区』

第9地区 [Blu-ray]
『第9地区 [Blu-ray]』
シャルト・コプリー,デヴィッド・ジェームズ,ジェイソン・コープ,ヴァネッサ・ハイウッド,ニール・ブロムカンプ,ピーター・ジャクソン,キャロリン・カニンガム,ニール・ブロムカンプ,テリー・タッチェル,シャルト・コプリー
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 2010年に公開し、多くの話題を呼んだSFドラマ『第9地区』。突如やってきた宇宙人を難民として受け入れる物語をドキュメンタリー形式で描いた本作は、アカデミー賞の4部門にノミネート。最近では待望の続編の企画も進行中のようです。

 1982年、南アフリカの上陸に突如UFOが出現。特殊部隊が潜入すると、そこには餓死寸前の宇宙人たちがいました。政府は彼らを難民として受け入れ、特別居住区「第9地区」に住まわせることに。しかし、そこはスラムと化し、宇宙人たちはその見た目から「エビ」と蔑称され、人間からひどい扱いを受けてしまいます。2010年、宇宙人の人口増加を懸念した超国家機関MNUは、難民を「第10地区」へと移住させる計画を実行。この計画を任されたのは、MNU職員のヴィカスで、彼は宇宙人たちに公的な手続きの"サイン"をもらうべく第9地区へと向かいます。しかし、そこで得体の知れないビンを発見。しかもその中から黒い液体が噴射し、ヴィカスの顔に直撃。彼は急いで顔を拭きますが、徐々に体調が悪くなり......。

 第9地区に到着した時のヴィカスは、宇宙人たちの卵を平気で焼却したり、取り締まりを厳しくしたりと、官僚的なやり方で淡々と計画を実行していきます。差別用語を使い、子どもと親を平気で引き離す。そんな酷い扱いに必死に耐える宇宙人たちが描かれており、見るに耐えない......という心が重くなる感覚が観客を襲います。しかしヴィカスは、自身の体に異変が起こり始め、その"ビン"を作った宇宙人との交流していくうちに、自分自身のモラルについて考え始めるのです。

 本作はSF映画ですが、「難民」や「差別」の問題が、現在の世界に見事当てはまる示唆に富んだ一本。ちなみに続編について、監督が最近のIGNとのインタビューで「脚本はまだ完成していないが、進展はある」と説明していました。続編のタイトルは『第10地区』になるようで、アメリカの歴史をテーマに続編の開発が進められているようです。新作もなんだか問題提起をしてくる一本になりそうです。

(文/トキエス)

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