もやもやレビュー

命燃え尽きるまで共にしたい愛の形『スーパーノヴァ』

『スーパーノヴァ』 7月1日(木)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次ロードショー

日本の製薬会社エーザイとアメリカバイオ医薬品会社バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」が新薬として承認されたというニュースが最近とびこんできた。症状を一時的に緩和する従来の薬とは異なり、病気の仕組みに作用して悪化を抑える作用がある世界初の新薬だ。この薬はまだ高価で誰でも簡単に手に入れられるようになるにはまだ時間がかかるかもしれないという問題はある。だがどうすることも出来なかったアルツハイマー病の治療が一歩前進したことは間違いない。

今年のアカデミー賞では認知症の老人の視点からみせる『ファーザー』の、まるでサスペンス映画さながらの演出が話題となった。
今回紹介する『スーパーノヴァ』はコリン・ファースとスタンリー・トゥッチが20年を共にしてきたカップルを熱演。ピアニストのサムと作家のタスカーはある日キャンピングカーで2人きりの旅に出る。タスカーが抱えた病が2人のかけがえのない思い出や今後の2人の未来を奪おうとしていた。そんな2人がお互いを思い合うがゆえに選ぶ人生の選択とは...。

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序盤は登場人物は2人だけで、ずっとずっと2人の時間をこっそりみているような感覚である。20年も一緒にいるのにそっけなかったり一見喧嘩をしているようにみえるやりとりさえもいつものことで、実はラブラブな2人の言動がほんの少しの動作で表現されているところがさすが名優といったところ。
これから大切なパートナーのことがわからなくなり、いつか自分が誰かさえわからなくなるという不安や恐怖を抱えているタスカーの姿と、それを受け止めて今後のことを考えるサムの姿が切なくて胸が苦しくなった。
ラストはサムのピアノが素敵で、2人らしい静かだけど大きな決意を感じる展開であった。
これから、自分の親やパートナー、もしかしたら自分自身がなるかもしれない病について考える静かで有意義な時間だった。アルツハイマー病という病気が、進行を防いだり治せる病気になる日が来ることを期待したいと強く願う。

(文/杉本結)

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『スーパーノヴァ』
7月1日(木)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次ロードショー

監督・脚本:ハリー・マックイーン
出演:コリン・ファース、スタンリー・トゥッチ ほか
配給:ギャガ

2020/イギリス/95分
公式サイト:https://gaga.ne.jp/supernova/
(c)2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film Ltd.

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