これを観たらまた明日からの子育ても頑張れる『明日の食卓』
『明日の食卓』 5月28日(金)公開
「息子を殺したのは、私ですかー?」という一瞬びっくりしてしまうキャッチコピーが目に飛び込んできた本作。石橋ユウという同姓同名の10歳の少年の子供をもつ3人の母親たち。それぞれに子育てに奮闘しながらも、息子を心から愛する幸せな家庭のはずだったのだが...。各家庭の問題が少しずつ浮き彫りになり怪しい雲行きへとなっていく。
本作の原作は椰月美智子で、第42回講談社児童文学新人賞を「十二歳」で受賞してから数々の受賞歴がある実力派。子を持つ母親なら誰もが直面する問題をリアルにえがき、社会問題にも切り込んでいる。この手の社会派エンターテイメントを得意とする瀬々監督がメガホンをとっている。
フリーライターの母親役を演じたのは菅野美穂。自身も子を持つ母というだけあってなんともリアリティのある演技であった。誠実な仕事をすることをいつも心がけ、なにごともおろそかにしない役柄はとてもしっくりきていた。
旦那のお姑さんがすぐ横に住んでいる専業主婦を演じたのは尾野真千子。細かなところまで専業主婦あるあるがよく描かれていた。
シングルマザーでありよく働く肝っ玉かあちゃんを演じたのは高畑充希。彼女が母親役を演じているのは初めてみたが、なにごとにもめげずに疲れた顔を子供に見せないように頑張り続けるという役どころを見事に演じきっていた。
どの母親にも共通していたのは父親が育児に協力的ではなかったということだ。
そのことがどれほど子育てで悩んだときに苦しい気持ちにさせるか...。市からのアンケートなどで「育児について相談できる人はいますか?」という質問がたまにある。その時に真っ先に思いつくのは父親、そして自分の両親など家族...身近な存在である人が相談できる相手ではなかったらそんな些細なことから育児の歯車は狂いだす。
育児において、肉体が疲れることよりも心が疲れることのほうが問題である。
どんなに自分の出来ることを懸命にやったとしても十歳はまだまだ子供で親心の全てを理解することはとうていできない年頃であり、だけど生意気なこともたくさん言う。
悪気はなかったとしても子供に「産まれてこなければよかった」といわれたらきっと私はとても怒りながら泣いてしまうだろう。親が子供にしてあげられることはお金持ちになることでも勉強ができるようにすることでもなくただぎゅっとハグをすること。
当たり前の幸せをともに共有し本音でぶつかり合える関係でいることがなによりも大切なのだと気付かせてくれる。子育てをする全ての母親へのメッセージのつまったラストに期待してほしい。
(文/杉本結)
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『明日の食卓』
5月28日(金)公開
監督:瀬々敬久
原作:椰月美智子
出演:菅野美穂、高畑充希、尾野真千子 ほか
配給:KADOKAWA/WOWOW
2021/日本映画/124分
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/ashitanoshokutaku/
(c)2021「明日の食卓」製作委員会