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太鼓にたくした女子高生の魂の叫び『藍に響け』

『藍に響け』 5月21日(金)より新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイント、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

声帯損傷からうまく言葉が話せないマリアと家庭環境が不安定な環(たまき)の2人が、高校という場所で出会い、太鼓を通じて青春の日々を過ごすストーリー。

太鼓の演奏を聞いたことはあるだろうか? 実際に聞いてみるとわかるのだが体の奥底まで震えるような感情が、言葉にしなくてもストレートに魂の叫びとなって伝わってくる。
太鼓について調べると歴史は古く、6世紀頃の古墳の埴輪がもっていたりして、日本でも古くから使われていた楽器のようだ。海外からやってきたようだが、いつどこで作られはじめたのかははっきりとわからない。けれど笛と並んで昔から形状の変わらない、愛され続けている楽器のひとつであることは確かである。

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この物語のなかで、環は言葉は話せるけれど本心を吐き出すことは出来ずにいる。一方、マリアは言葉自体は話せないものの、紙に書いて積極的に相手に自分の考えを伝えていて、ある意味おしゃべりだったりする。
そんなマリアに対して和太鼓部の周りの人達は彼女が言葉を話せないことを忘れたかのように話しかけるし、普通にライバル視している。
話せるけど話せない、話せないけど伝える熱意があるという2人の出会いは、ちぐはぐなようで足りないピースをお互いの存在でうめるような気持ち良さがある。
まさに青春。
そして、原作の『和太鼓†ガールズ』という作品から出来上がった本作は、和太鼓の和の雰囲気にあわせて『藍』という青色の表現を使ったのも凛としたイメージになり、映画の世界観とマッチしていると感じた。

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太鼓の魅力が存分に発揮された映画である。叩くだけだと思っていた太鼓の奥深さやひとつひとつの音に気持ちをこめて叩くことでうまれる感動。スクリーン越しからでもしっかりとうけとれる一作である。

(文/杉本結)

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『藍に響け』
5月21日(金)より新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイント、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

監督:奥秋泰男
原作:すたひろ「和太鼓†ガールズ」(双葉社刊)
出演:紺野彩夏、久保田紗友、長瀬莉子、板垣瑞生、小西桜子 ほか
配給:アンプラグド

2021/日本映画/117分
公式サイト:http://ainihibike.com/
©すたひろ/双葉社 ©2021「藍に響け」製作委員会

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