もやもやレビュー

ただそばにいる優しさを知る『僕が跳びはねる理由』

『僕が跳びはねる理由』 4月2日(金)より東京・角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国順次公開

本作の原作は東田直樹の「自閉症の僕が跳びはねる理由」です。日本人の書いた本が30か国以上で出版され世界中で広く読まれています。
原作者の心の声が文字となっているのですが、作者自信が自閉症でありこれは本当に私たちの想像する以上に大変なことなのだと思いました。

自閉症という病が抱える感情を表にうまく表現出来ないことや突然のようにふってくるフラッシュバックに驚き叫んでしまったり、うまく対処出来ないことがどれほどに本人にとっても家族にとっても大変なことなのか、きっと簡単にわかるとは言ってはいけないのでしょう。だけど、理解する第1歩として本当に本当に素晴らしい作品でした。

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私が映画を好きな理由のひとつに、自分一人では知ることの出来ない他人の視点や考え方を知ることができることがあげられます。アクション映画をみて爽快な気持ちになることも必要ですが、知りえなかった他人の感情に少しだけふれることが出来るような、そんな体験ができるところも映画の魅力のひとつだと思うのです。また、知らないことを知るために自分から歩みよるその気持ちが今後の自分のためにもなると思います。

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自閉症がいったいどんなものなのか名前を知っているだけで詳細な情報は知りませんでしたが、劇中でとてもわかりやすく説明してくれていました。私たちの記憶は点と点が繋がって線になり時系列に並んで昨日や1年前の記憶が存在します。ところが自閉症の場合点が点のままあちこちにあって、10歳になっても昨日のことのように1歳の時の記憶を鮮明に思い出せたりするのです。ただ、思い出すタイミングを自分で選択することは難しく、静かにしなくてはいけないような時にも突然と思い出されて自分でもそのことに驚いたり、楽しかった記憶に笑ってしまったりするのです。そういうことを知らない人からしたら突然発露される喜怒哀楽をおかしく思い悪魔がとりついたなどと昔は言われたりしたようです。

本人の努力で治すことが出来るような病気ではないから厄介でもあり周囲の理解が必要不可欠であると感じました。1人でも多くの人が自閉症のリアルをしる機会として出会って欲しいそんな一作でした。

(文/杉本結)

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『僕が跳びはねる理由』
4月2日(金)より東京・角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国順次公開

監督:ジェリー・ロスウェル
原作:東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール、角川文庫、角川つばさ文庫)
配給:KADOKAWA

原題:The Reason I Jump
2020/イギリス/82分
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/bokutobi/
(c)2020 THE REASON I JUMP LIMITED, VULCAN PRODUCTIONS, INC, THE BRITISH FILM INSTITUTE

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