もやもやレビュー

女でいると強くなれる『MISS ミス・フランスになりたい!』

『MISS ミス・フランスになりたい!』 2/26(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国公開中

フランス映画らしい華やかで洗練された美しさ、だけど人間らしく力強い作品がうまれた!ジェンダーにとらわれない究極の美しさで世界を魅了するフランスのモデル、アレクサンドル・ヴェテール初主演作品。

本作は男性でありながらも幼い頃から夢はミスフランスになること!という美少年アレックスが主人公。両親の事故など悲しい過去を持ちながらも多国籍でボーダーレスな下宿で賑やかな家族のような存在と一緒に暮らすアレックス。忘れかけていた夢を思い出し、性別を隠しミスフランスに挑戦することに。

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アレックスは、知らなかったらわからないくらいに本当に女性に溶け込んでいる。どこまでが演技なのか。実際にジェンダー男子として活躍するモデルを主演に迎えたことで、男女の境界線は見た目上では全くわからない。それよりも、男性は知ることのないであろう女性の内面的な本性の部分を本作品はミスコンの舞台裏としてクローズアップしているから面白い。

みんなそれぞれ美しいミスコン出場者達。彼女たちが争うのは外見の美しさだけではなく内面の美しさも持ち合わせているかどうか。ひとつひとつの動きも審査の対象になる。ただ美しいだけではグランプリは勝ちとれない。作品の中でも「完璧と普通の距離がわかる?」と指導する女性が問う場面がある。その差は「数ミリ」ということが伝えられる。
ほんの数ミリの差を争う世界は美しいだけではいられない厳しい世界でもあるという現実もみえてくる。ラストもまさかの展開だった。

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日本の作品でもジェンダーレス男子として今や引っ張りだこの菅田将暉が「海月姫」で美しい女性の姿をみせている。ジェンダーレス男子は世界中にいるので今後増加傾向にあると思われる。男性も美と追究する時代に突入し、最近では男性が通う脱毛サロンも急増しているらしい。美の探求は今後性別を問わない時代へと突入していくことを、強く実感する作品だった。
(文/杉本結)

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『MISS ミス・フランスになりたい!』
2/26(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国公開中

監督:ルーベン・アウヴェス
出演:アレクサンドル・ヴェテール、イザベル・ナンティ、パスカル・アルビロ、ステフィ・セルマ
配給:彩プロ

原題:MISS
2020/フランス/107分
公式サイト:https://missfrance.ayapro.ne.jp/
(c) 2020 ZAZI FILMS - CHAPKA FILMS - FRANCE 2 CINEMA - MARVELOUS PRODUCTIONS

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