もやもやレビュー

あなたはその違和感にどこまで気がつけますか?『哀愁しんでれら』

『哀愁しんでれら』 2月5日(金)全国公開

今思い返せば、この不気味なポスターを見たときから私はこの作品から漂う異様な雰囲気に飲み込まれていたのかもしれない。そのポスターは父親と母親それにうさぎを抱いた娘の3人家族がニッコリとほほえんでいる。だけど、瞳が描かれていない為、全員白目の状態でなんとも不気味なのである。

主人公の小春(土屋太鳳)は幼少期に母親に捨てられた悲しい経験から、自分のような子供がもう増えて欲しくないと児童相談所で懸命に働いていた。家では父親が自転車屋を営み小春と妹、祖父を養っていた。ある日、小春は祖父が倒れ、家は火事になり、彼氏の浮気が発覚するという不幸の連続にみまわれる。そんな一日の最期に出会った開業医の大悟(田中圭)と運命的な出会いを果たし、小春のシンデレラストーリーの幕が開ける。

哀愁しんでれら_サブ1_s.jpg

この作品のメガホンを取ったのは、商業長編映画での監督としては1作品目となる渡部亮平。今までに『3月のライオン』『ビブリア古書堂の事件手帳』の脚本をつとめている実力派。渡部監督の作品の魅力は伏線の張り方ときれいな回収力にある。登場人物のひとつひとつの言動に意味があり、ムダのない計算されつくした脚本能力の高さは、最近の日本人監督の中では右に出る人がいないのではないだろうか。

この作品の端々で感じる違和感のポイントとして「赤色」があげられる。通常なら白いウェディングドレスで歩くはずのバージンロードで小春が選んだのは真っ赤なドレス。お葬式に赤い靴を履いていく娘。この赤色がどんどん積み重なっていくことにどのような意味があるのだろうか。

哀愁しんでれら_サブ4_s.jpg

大切な人間に順番をつけて生活をする。文字にするととても嫌な言葉だが、大きな声では言えないけれど誰もがしているそんなことを「新しく出来た家族」という形で表現したのが本作なのではないだろうか。
見たくない人間の汚い部分を見たときに、どのような気持ちが芽生えるのか...。「自分の子供であっても相手のことなんてわからない。」小春の父親のこの台詞が印象的だった。そして、近くに居る人の思想がじわじわと自分の中に入り込んでくる異質感。まるでそれは病気と戦う抗体のようだった。
シンデレラストーリーの先に待つ意外な結末は必見だ。

(文/杉本結)

***

哀愁しんでれら_サブ7_s.jpg

『哀愁しんでれら』
2月5日(金)全国公開

脚本・監督: 渡部亮平 
出演:土屋太鳳 田中圭 COCO 山田杏奈 ティーチャ 安藤輪子 金澤美穂 中村靖日 正名僕蔵 銀粉蝶 / 石橋凌 他
配給:クロックワークス

2021/日本映画/114分
公式サイト:https://aishu-cinderella.com/
©️2021 『哀愁しんでれら』製作委員会

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND 映画部!

BOOK STANDプレミアム