もやもやレビュー

モノには愛情を『恋する惑星』

恋する惑星 (字幕版)
『恋する惑星 (字幕版)』
トニー・レオン,フェイ・ウォン,ブリジット・リン,金城武,ヴァレリー・チョウ,ウォン・カーウァイ,ウォン・カーウァイ,ジェフ・ラウ
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おうち時間が増えることで、ものに話しかけることが増えた、という人は案外少なくないと思う。ごま油を切らしたら「もう底をついたのっ!?」、歯磨き粉の最後の一絞りが出ないときは「んもう!」と苛立ちを見せることもあるかもしれない。ものに辛く当たったときに思い出したい映画がある。

香港映画「恋する惑星」(1994年)に出てくるトニー・レオンは、長年の友人にでも話しかけるかのように、モノに話しかける。ウォン・カーウァイ監督が手掛けた本作は二つのストーリーをつなぎあわせたもので、それぞれの話に恋に敗れた男が登場する。レオン演じる警官663号は、後半の失恋男である。

彼は語る。「彼女が去ってから部屋中のものがどこかさみしげだ」と。そうして俺がどうにかしなくちゃと言わんばかりに、励まし役にまわる。「(濡れたタオルに向かって)もう泣くなって言っただろ。強く、タフにならないと」「寒いか?あっためてあげよう(シャツにアイロンをかける)」...夜にひとりで、厳しくも愛情の込もった言葉を部屋中のものに語りかける。

でも、彼のように思いやりを持ってモノと接するだけで、生活はきっともっと、ほのぼのしてくる。なくなりかけたごま油の瓶に「最後の一滴までしっかり使ってあげるからね!」とやさしく語りかけるだけでも、キッチンの雰囲気がほんわかする。これからは怪しくならない程度にこっそりと、モノに愛情を持ってしゃべりかけようと思う。

(文/鈴木未来)

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