もやもやレビュー

イケボに震える『私をくいとめて』

『私をくいとめて』 絶賛公開中!

恋愛映画においての年齢別主人公の思考を考えさせられる作品。(もちろん主人公のキャラクターによっての振り幅もあるが...)
歳をとるほど恋愛に奥手になるのかもしれない。なにも知らない10代は傷つくことすら恐れない恋愛をする。スクリーン越しの観客には先がよめる展開であったとしても、その中で生きるキャラクターは1秒1秒を必死に生きている。悔いなく生きている姿に好感をもてるから恋愛映画をみることがやめられない。

「私をくいとめて」場面写真㈪.jpg

結果よりも一人一人の登場人物の思いの強さや儚さが現実世界に戻った時に自分の背中を押してくれることもある。20代の恋愛は前半と後半で差が出てくる。それは結婚という文字がチラつくようになるからだろう。
「人生の伴侶をみつける」。そんな気持ちになるとなんだか壮大で本当にこの人でいいのかなど、難しいことまで考えてしまう。そうすると、この作品のようにいつの間にか「脳内の声」なるものが誕生するのかもしれない。
ただそれだけならきっと誰にでも存在する。本作が映像化した時に面白いのは女性の脳内の声がイケメンボイスの男性だからだろう。この声...本当に耳が癒される。この脳内ボイス「A」を色々な俳優さんや声優さんで何バージョンも制作して欲しい!笑
声フェチな人も世の中多いだろう。男女逆転バージョンも面白いかも。

「私をくいとめて」場面写真㈬.jpg

設定は少し違うけれど、人工知能と恋をする『her/世界でひとつの彼女』を思い出した。
会ったことのない相手との声だけでのやりとりには消えてしまった時に見つけだせないもどかしさがお約束のハプニングになるのだけどそこがドキドキとして次の展開までの時間を楽しませてくれる。
東京国際映画祭観客賞を受賞した本作。『勝手にふるえてろ』の大九監督と原作、綿矢りさの再タッグ! 期待を裏切らない作品だった。

(文/杉本結)

***

「私をくいとめて」場面写真㈫.jpg

『私をくいとめて』
絶賛公開中!

監督・脚本:大九明子
原作:綿矢りさ「私をくいとめて」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
出演:のん 林遣都 臼田あさ美 若林拓也 前野朋哉 山田真歩 片桐はいり/橋本愛
製作幹事・配給:日活

2020/日本映画/133分
公式HP:kuitomete.jp
(c)2020『私をくいとめて』製作委員会

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム