料理のおいしい食べ方を考える『エイブのキッチンストーリー』
『エイブのキッチンストーリー』 2020年11月20日(金)より新宿シネマカリテほか全国公開中!
突然ですが、あなたは食事を食べるとき誰とどのように食べていますか?
一日に朝昼晩3食の食事をするとしよう。1回30分の食事を3回食べるだけでも一日に1時間30分は食事をしていることになる。家族や友人とゆっくり食べることもあるだろう。食べれば育つんだから、食事なんてなんでもいいと考える人もいる。それは、大人になればそれでいいのかもしれないと思う。だが、子供の時には椅子に座って食卓を家族で囲む時間は大切にするべきだと考える。そこでとるコミュニケーションは小さなことの積み重ねで将来子供の財産にもなるだろう。
そんなことをこの映画を鑑賞して考えさせられた。
主人公のエイブの本名はエイブラハム。本人はエイブと周囲から呼ばれたいと思っている。だが、イブラヒムやアビなど本人が望む呼び名とは違う呼び方をする家族。イスラエル系の母親とパレスチナ系の父親をもつエイブは文化や宗教の違いから対立する家族に悩まされていた。そんなとき「フュージョン料理」を作るシェフのチコと出会う。エイブは自分にしかつくれない料理で家族をひとつにしようと決意する。
私は子育てをする中で家族に食事を作る時間が増えてきて「幼児食」というものの勉強を始めた。子供に食事を作っても食べてくれる日もあれば食べてくれない日もあり、食事のことで悩む親は周りにもたくさんいる。色々と試行錯誤する中で私なりの答えとして、「食事を上手に作るかどうかより、一緒においしく食べること」が大切なのだと気がついた。一緒に食卓を囲む時間はお互いに相手のことを知る時間になる。食べたことのなかった料理を口にすることは勇気のいることだけど、その料理を出してくれた相手に歩み寄る第一歩になる。
それがこの作品では料理と宗教を掛け合わせて表現されていた。
多様性の時代にどのように私たちは生きていくのか考えさせられる良作だった。
(文/杉本結)
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『エイブのキッチンストーリー』
2020年11月20日(金)より新宿シネマカリテほか全国公開中!
監督:フェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ
出演:ノア・シュナップ、セウ・ジョルジ ほか
配給:ポニーキャニオン
原題:ABE
2020/アメリカ・ブラジル合作/85分
公式サイト:https://abe-movie.jp
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