もやもやレビュー

心の中だけでもおバカになれる瞬間が欲しい人へ。『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』

『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』 8月14日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー

暗いニュースが多いこのご時世だからこそ、おバカ映画の存在価値は急上昇しているのではないだろうか?
邦画では『今日から俺は!!劇場版』が大ヒットしているのもお祭りや花火、フェスなど夏の一大イベント次々と中止になり社会全体がどこかでおバカになれる瞬間を欲しているからかもしれない。せめて心の中だけでもおバカになれる瞬間を求めている人におすすめしたいのが本作だ。
『ハングオーバー!』『バッドママ』などを手掛けてきたジョン・ルーカスとスコット・ムーアのコンビが監督、脚本を手掛けたちょっと下品なユーモアたっぷりの一作となっている。

幼い頃からスマホ依存症で友人も恋人もゼロの主人公フィル。ある日、ハプニングが起こりスマホが壊れてしまう。そこで機種変更した携帯との出会い(?)が彼の人生を大きく変化させていく。

サブ2.jpg

まだまだ機械に話しかける生活とはほど遠い筆者だが、世の中では「OK、Google」なんて話している人も少なくないのか...?
本作の機種変後のスマホはジェシーという名前で、話しかけると友達のように返事をするだけではなく、次にとろうとしている行動に対してのアドバイスまでしてくる。それだけではなくとった行動の感想も「きもい」「最低」などと話しかけてくる。だが、フィルはスマホに負けることなく自分を変える行動を自分の正しいと思う方法で行い突き進んでいく。そんなフィルにいつのまにか恋するスマホ(笑)。スマホは彼女気取りで束縛したがったり大暴走。ついには個人情報まで操って暴走ストーカーになってしまう。

もしも自分のスマホに意志があったら...という面白い視点から出来上がった最上級コメディ。皆さんはスマホでどんな機能を使うだろうか? 筆者はよく写真の機能を使っているが、撮影の度に「センスない」「ださい」なんて言われたらと思うとぞっとしてしまう。でも、優しくアドバイスしてくれたり、もしもイケボだったらキュンキュンしちゃうのか?
今回筆者は字幕版で観たのだが、本作の吹き替え版のキャストが豪華なのだ!
スマホの声を花澤香菜が怪演するというだけで吹き替え版も観たくなる。最近ではアニメ「鬼滅の刃」で甘露寺蜜瑠を演じている。普段の役柄からは想像のつかないお下品な台詞連発になっていることは間違いない。

スマホという存在は家に忘れただけでそわそわしてしまったり、どんなに時間に余裕がなくても取りに帰る人も少なくはないだろう。肌身離さずに過ごしているといっても大げさではない。これが電話ではなく人型ロボットとなって隣を歩けばドラえもんの完成?
遠い未来の話ではないのかもしれない。

なんて、真剣に考察するのは時間の無駄か...。これが最大の褒め言葉となってしまうことが許される映画だ。映画の中の「インスタの世界は嘘っぱちだ。自分の気持ちより見た目を気にしていたということに気がついた。」という台詞には、はっとさせられる人は多いのではないだろうか? どんなおバカ映画の中にも気づきはある。
この夏は暴走スマホとのひとときのデートも悪くない。

(文/杉本結)

***

サブ3.jpg

『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』
8月14日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー

監督・脚本:ジョン・ルーカス、スコット・ムーア
出演:アダム・ディヴァイン、アレクサンドラ・シップ、マイケル・ペーニャ、ローズ・バーン(声)
配給:ショウゲート

原題:JEXI
2019/アメリカ/84分
公式サイト:http://jexi-movie.com
(c) 2019 CBS Films Inc. All Rights Reserved.

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOK STANDプレミアム