もやもやレビュー

疑念や恐怖心が強いと、本質を見失う。『イット・カムズ・アット・ナイト』

イット・カムズ・アット・ナイト(字幕版)
『イット・カムズ・アット・ナイト(字幕版)』
ジョエル・エドガートン,クリストファー・アボット,カルメン・イジョゴ,ケルビン・ハリソン・ジュニア,ライリー・キーオ,トレイ・エドワード・シュルツ,トレイ・エドワード・シュルツ
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 『IT/イット "それ"が見えたら、終わり。』や『イット・フォローズ』など、得体のしれない「イット(それ)」に襲われるホラー映画はたくさんありますよね。そんな中、ホラーではなくスリラー要素が満載で、ダークで、深く考えさせられる「イット」映画に出会いました。その名も『イット・カムズ・アット・ナイト』です。

 舞台は森の中の一軒家。未知の病原体が広がる中、大黒柱のポールは必死で家族を守ろうとしてきました。しかし、ポールの父が病に倒れ、射殺し、火葬することに。どんな病気かもわからない、どう感染するのかもわからない......。そんな恐怖の中、ある若者が家に侵入してきます。彼の名はウィル。水を求めて、廃墟らしきポールの家に侵入したといいます。ポールは、すぐさま彼を木に縛り上げ、感染していないかどうか観察したあと、ウィルの素性を確かめます。すると、ウィルには妻と小さな息子がおり、さらには鳥やヤギなどを飼っており食料もあるといいます。食料を分け与えるという条件で、ポールはウィル一家を自宅に招き入れ、そこから奇妙な共同生活がスタートします。

 ウィル一家と仲良くなる一方で、「彼らは他人だから」という猜疑心も常に持っているポール。そんな2つの心理が繰り出す極限すぎる心理スリラー。そして、ポールの家では、赤いドアのカギを閉めておくというルールがあるのですが、ある夜、そのドアが開いていたことから、2つの家族の間に少し芽生えた絆が一瞬で崩れます。本作の心理スリラーが最後に教えてくれる「イット」の正体に、ダークな気持ちにさせられます。疑念や恐怖心が強くなりすぎた人々の行く末に、あなたもきっと多くのことを考えさせられるはず。

(文/トキエス)

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