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母親の存在の大きさを考える『MOTHER マザー』

『MOTHER マザー』 7月3日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中

母親と子供の関係は言葉で簡単に表現できるものではない。
子供の頃の自分にとって、母親が言うことが自分の常識となりそこに間違いがあるとは疑うことも知らなかった。こうして『MOTHER マザー』という映画と出会い自分と母親のことを思い返してみると、母親の言動は恐ろしいほど子供に大きく影響を与えるとよくわかる。

この映画は、その日暮らしのシングルマザー秋子(長澤まさみ)が子供の周平を幼い頃から自分に忠実に従うように育て上げる。身内にも絶縁され母親以外に頼る人もいない周平。周平はなんとか母親の期待に応えて少しでも自分を愛して欲しいと、犯罪行為にまで手を染めてしまう。

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どうでもよいことかもしれないが私の母親はワイドショーなどをみながらネイルをしている女性がTVにうつる度に「ネイルをしている人は家事をしてない証拠!」と言っていた。ネイルをして包丁を持つなんてありえない。そういつも母親から言われて育った。化粧っ気のない母親だった。だが、世の中は空前のGALブームで友達も可愛いネイルをするようになった。もちろん私もネイルをしていたが母親に言われていた言葉が脳裏をよぎり、爪を見られないようにすごしていた。とても悪いことをしているような気持ちにさえなっていた。そんな私が結婚した夫の母親は流行に敏感な人だった。私と同じ香水をして、可愛いネイルをいつもしていて私のネイルが変わる度に、いち早く気づいて可愛いねと言ってくれる。いつも可愛いネイルをしているお義母さんは家事も完璧にこなす人だ。
「ネイルをしていても完璧に家事をこなす人はいるんだ!」という当たり前かもしれないことに最近気づいた。

子育てはある種の洗脳とも言えるかもしれない。自分が出産を経験して現在2人の子供の母親となり子育てに忙しい毎日。先日、さくらんぼの種を飲み込んでしまった娘に「おへそからさくらんぼでてくるよ」と言った。心配そうにおへそをみつめる娘。大人が冗談や軽い気持ちで放った一言を子供は全力で受け止めてくれる瞬間だった。

母親も一人の人間である。失敗することもある。親も子供に寄り添って一緒に成長してゆけばいい。子供の興味はどんなことにあるのか知っている親でありたい。
子供の立場を考えながら、母親という存在の大きさを改めて考え直す機会をくれる映画であった。

(文/杉本結)

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『MOTHER マザー』
7月3日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中

監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣/港岳彦
出演:長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、木野花 ほか
配給:スターサンズ/KADOKAWA

2020年/日本/126分
公式サイト:https://mother2020.jp
(c) 2020「MOTHER」製作委員会

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