もやもやレビュー

53年の時を経て描かれるラブストーリー『男と女 人生最良の日々』

『男と女 人生最良の日々』 TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほかにて全国公開中

 1966年に製作された大人のラブストーリー『男と女』。当時カンヌ国際映画祭のパルムドール、アカデミー賞脚本賞・外国語映画賞を受賞するなど世界の映画祭で次々と賞をとり話題となった。

 ストーリーとしては、訳ありの男女が出会い恋に落ちる物語。フランス映画というキーワードから連想するお洒落な街並みや衣装が突出して出てくるわけではない。この映画の持つ魅力は計算され尽くした台詞にある。とても短い電報だが女性から男性に「愛してる」という言葉を伝えることで2人の人生は大きく変わる。伝えた女性の勇気とその言葉を受け止めた男性の様子が繊細にわかりやすくロマンチックに描かれている作品なのだ。その『男と女』という作品から53年たった今、同じ監督、同じキャスト、製作陣が再集結して撮影が行なわれた。

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アヌーク・エーメとジャン=ルイ・トランティニャン

 当時20代だった監督やキャストは80代になっても現役で監督や役者を続けていたという奇跡。だれか1人でもかければこの作品は生まれなかったのかと思うとこれだけでも素晴らしいことだ。ちなみに、息子や娘役だった少年、少女も60代になって同じ役者が続投している。

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ジャン=ルイの息子役アントワーヌ・シレとアヌークの娘役スアド・アミドゥ

 だが、この作品すごいのはそれだけではない。当時の雰囲気や台詞回しが同じ香りを嗅いだときのように蘇ってくる。この作品、前作の『男と女』を見たことのない人はどう受け取るのだろうか? 気にはなるが、前作を知らなくても現在と過去の映像が綺麗に組み合わせられているので、すんなりと要点を理解することが出来る。知っている人には懐かしくもあり、鑑賞時の気持ちも蘇ってくるのでより楽しめるだろう。そして、だれもが自分に置き換えられるような普遍的な物語になっている。

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 若いときに恋した相手にもしも50年後再会したらどうなるのだろう?
 2人の表情や当時と同じ仕草がとても魅力的な作品だった。手と手を取り合うそれだけで、もう言葉さえも必要がないのではないかと思うくらい見とれてしまった。人生が常に最良であるように生きていきたいとポジティブな気持ちになれる作品だ。

(文/杉本結)

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『男と女 人生最良の日々』
TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほかにて全国公開中

監督:クロード・ルルーシュ
出演:アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、スアド・アミドゥ、アントワーヌ・シレ
配給:ツイン

原題:Les plus belles annees d'une vie
2019年/フランス/90分
公式サイト:http://otokotoonna.jp
© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma

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