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ヨットレースで世界一周!『喜望峰の風に乗せて』

『喜望峰の風に乗せて』 1月11日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

1964年のイギリスで本当にあった過酷なヨットレースの実話。コリン・ファースを主演に迎え当時の様子が再現された。コリン・ファースといえば、『キングスマン」でみせる格好いい紳士、『マンマミーア」で踊って歌う陽気なおじさま、今回はまた雰囲気ががらりと変わったしんみりとした哀愁漂う彼を堪能できる。

このレース一体なにが過酷なのかというと、海に出てから一度も港に寄らず世界一周をするというレースなのだ。港に寄らないということは広い海の上に浮かぶ船上に一人ぼっちで、誰とも会話することもなく生活をすることになる。船上で起こるトラブルもすべて自分一人で解決しなくてはいけないし、もちろん命の危険とも隣り合わせ。食料がなくなっても港に立ち寄らないというルールなので立ち寄れば失格になってしまう。いつ世界一周が終わるのかもわからない広い海の上で、何ヶ月も家族に早く会いたいと願いながらゴールを目指す。本当に過酷なのは体力よりも精神面なのかもしれない。

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夫の帰りをけなげに待ち続ける妻役は『ナイロビの蜂」でアカデミー賞を獲得したレイチェル・ワイズ。
そして監督は『マン・オン・ワイヤー」『博士と彼女のセオリー」などを手掛けたジェームス・マーシュだ。彼の撮る映画は実在の人物を題材にした映画が多く、どの作品もフォーカスされる人物を知らなくてもその人のことを深く知れるところまで観客をもっていってくれるうまさがある。
そして、毎回扱うテーマの題材がバラバラだけど他に似た映画を探すと見当たらないような「今回はここにきたか!」という楽しみも、ジェームズ・マーシュ監督の魅力である。
ヨットレースに出場した選手の気持ち、その人の無事を祈りながら待つ家族の気持ち、すごい記録を期待する街の人々とマスコミというさまざまな思いが交差する。

ドナルド・クローハーストとは一体どのような人物なのか?
聞いたこともない人物だったのに鑑賞後は一人ヨットを趣味にしている知り合いが増えたかのような錯覚にも陥りそうな、そんな気分にさせてくれる作品だった。

(文/杉本結)

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『喜望峰の風に乗せて』
1月11日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

監督:ジェームズ・マーシュ
出演:コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、デビッド・シューリス、ケン・ストット ほか
配給:キノフィルムズ/木下グループ

原題:The Mercy
2017/イギリス/101分
公式サイト:http://kibouhou-movie.jp
©STUDIOCANAL S.A.S 2017.

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