もやもやレビュー

愛情の究極すぎる一方通行。『少年は残酷な弓を射る』

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 第64回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、高評価を得た『少年は残酷な弓を射る』。リン・ラムジー監督らしい、独特な映像美が見ものの本作ですが、これがまた愛情の究極な一方通行を描いていて、胸が痛くなります。

 世界を旅しながら、自由奔放に生きてきた作家のエバ(ティルダ・スウィントン)。彼女は妊娠したことでキャリアを捨てて母の道を選びます。しかし、生まれてきた息子ケヴィン(エズラ・ミラー)はなぜかエバに懐きません。というか、いつも反抗的。やがてケヴィンが美しい少年へと成長したころ、とある事件が発生します。

 本作を見ていると、いつ、どこでケヴィンがエバを憎み始めたのかわかりません。ケヴィンは本当に、ただただエバが憎いのです。反抗的なケヴィンを、それでも愛そうとディナーに誘ったりパターゴルフに連れて行ったりするエバ。しかし、頭脳明晰なケヴィンはなぜかエバの一歩先を読み、「いい時間を持てたって言って涙ぐむんだろ」なんて心ない言葉を発します。エバがケヴィンに一言も言い返すことができないその状況から、観客にまで痛みが伝わってきます。「思春期の子は複雑」だけで済まされない作品。母親になることの難しさ、そして子育ての苦悩を突きつけられました。子育てに悩んでいる人は絶対に見ちゃいけない!

 残酷さと愛情、そして人間の怖さが混じり合った作品。もやもやが残りますが、やっぱりリン・ラムジー監督ってこういうジャンルが得意なのか、感想の第一声は「なんだか美しかった」です。歪んだ愛情をこれまで究極に描いている作品は珍しい気もします。ちなみにケヴィンを演じたエズラ・ミラー本人も、美しく成長し『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』などに出演しているので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。

(文/トキエス)

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