もやもやレビュー

世界16の国と地域でサプライズ大ヒット!『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』 ついにスクリーンの中にも受験戦争に挑む若者達の姿が映し出される時代がやってきた。

社会人になってしまえばテストを受けるような機会もほとんどなくなる。しかし思い返せば社会にでるまで学生の間は本当にテストの連続であったように思う。この作品の背景となっているのはアジア各国で深刻な社会問題にもなっている熾烈な受験戦争。中国で実際に起きた集団不正入試事件をモチーフに描きだされている。

頭はいいが父子家庭で生活の苦しいリン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)は特待生として進学校へと転入する。学校で仲良くなった友人のグレース(イッサヤー・ホースワン)とグレースの彼パット(ティーラトン・スパパンピンヨー)の2人は勉強が苦手であった。
そんな2人がリンにもちかけたのはなんと「勉強を教えて欲しい」ではなく「答えを教えて欲しい」というお願いだった。簡単に了承するはずがないお願いだが、お金を支払うということで生活の足しになればとリンは了承してしまう。
そのカンニングの方法がなんとも巧妙でありリアルで本作のみどころだ。
ラストに行なわれる28分間にもおよぶカンニングシーンはみてるこっちがドキドキが止まらない。

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カンニングが良くないことであることはだれもが理解している。それでも教師にばれるかばれないかの瀬戸際のシーンはリンを応援してしまっている自分がいた。
それくらいまるで自分がリンに答えを教えてもらっている生徒の一員になって一緒にテストを受けているような錯覚にさえ陥るのだ。

カンニングが悪いことであるとわかっていながらも答えを教えるリンや教えてもらう生徒達には10代の少年少女ならではの危うさを感じられた。
手口の巧妙さはただのカンニング映画というよりはクライムエンターテインメントのようだった。
もしかしてこの映画をみたらまねをしてしまう人がでてきてしまうのではないかと心配にもなるが絶対にまねはしないようにしましょう!

(文/杉本結)

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『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』
9月22日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

監督:ナタウット・プーンピリヤ
出演:チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、チャーノン・サンティナトーンクン、イッサヤー・ホースワン、ティーラドン・スパパンピンヨー、タネート・ワラークンヌクロ、パシン・クワンサタポーン、サリンラット・トーマット
配給:ザジフィルムズ/マクザム

原題:Chalard Games Goeng
2017年/タイ/130分
公式サイト:http://maxam.jp/badgenius/
(c) GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.

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