母親達の心の声が聞こえてくる『タリーと私の秘密の時間』
今までに一度も見たことがないような役を『JUNO/ジュノ』『ヤング≓アダルト』と手掛けてきた脚本家ディアブロ・コディが、今回選んだ題材は育児に奮闘する母親だ。
育児に奮闘する母親の映画は沢山あるかもしれないが、出産=幸せな生活として描いている作品が多い。この作品は幸せの中にある母親特有の悩みや育児あるあるにフォーカスをあてている。
3人目の出産を目前に忙しい日々を送るマーロ(シャーリーズ・セロン)。あまり手のかからない娘と情緒不安定な息子、そして優しいけれど家事や育児は妻に任せきりな夫ドリュー(ロン・リヴィングストン)との生活は赤ちゃんがやってくるまでなんとか出来ていた。
しかし、出産後どうにも立ちゆかなくなってきたマーロは夜間のベビーシッターを兄の勧めで頼むことにする。そこにやってきたのは20代の若い女性タリー(マッケンジー・デイヴィス)だった。
人に頼ることが苦手なマーロにタリーは自分を頼ってと自信たっぷりに宣言しマーロを寝室に行くように促す。朝起きると完璧な仕事をしてタリーの姿は消えている。
マーロはタリーにしだいに心を許し様々な相談をしたり話を聞いてもらうようになるがタリーは自分自身のことを多くは語らない。そんな彼女の正体は...。
3人の子供を出産した母親の役を演じるにあたり、美しい容姿しか思いうかばないシャーリーズ・セロンがなんと18㎏もの増量をしている。そんなシャーリーズ・セロンの姿も必見だ!
タリーはマーロに夜眠るときにこんな言葉を話しかける。
「明日は別人よ、少し成長しちゃう」
この台詞は育児をしていると本当にその通りだなと思わずにはいられない。赤ちゃんの成長は早い。一瞬一瞬見逃さないようにしないと昨日出来なかったことも今日はひょいっとやってのける。こんな育児で感じる些細な出来事が作品のなかに多く登場する。
出産後、産後うつや育児ノイローゼになる人もいる。赤ちゃんのおむつを替えて授乳をして泣いていたらあやして寝かせて...。産後一ヶ月は昼夜とわず3時間おきに授乳をするように育児の教科書には書いてある。出産で疲れた身体にゆっくり眠ることの出来ない環境がどれだけ大変か。男性は母乳が出ないことや次の日も仕事だからという理由で女性に夜間の育児を任せきりにしていないだろうか?3回のうち1回だけでも夜中に手伝ってくれたらどれだけ助かるか考えて欲しい。
子育て中のママは映画をみる時間の余裕もないかもしれないが95分とわりと短い時間に共感できるシーンも多く詰め込まれているのでオススメしたい。育児に疲れたという気持ちの時こそ私だけがこの感情をもっているわけではないんだなとリフレッシュして欲しい。
もちろんそれ以外の人もタリーの正体を推理しながら鑑賞し、ミステリー映画として存分に楽しめる。伏線のはりかたがとてもうまく見終わったあとに残るざわざわとした感情とともにもう一度見直したくなる作品であることは間違いない。
(文/杉本結)
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『タリーと私の秘密の時間』
8月17日(金)TOHOシネマズ シャンテ ほか全国ロードショー
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:シャーリーズ・セロン、マッケンジー・デイビス、マーク・デュプラス、ロン・リビングストン、アッシャー・マイルズ・フォーリカ
配給:キノフィルムズ
原題:Tully
2018/アメリカ/95分
公式サイト:http://tully.jp
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