やっぱりタイムスリップに憧れちゃう『ミッドナイト・イン・パリ』
- 『ミッドナイト・イン・パリ [DVD]』
- オーウェン・ウィルソン,マリオン・コティヤール レイチェル・マクアダムス,ウディ・アレン
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タイムマシンが手に入る時代がようやくやってきたとしたら、あなたはどの時代へとすっ飛ぶだろうか。せっかくの機会なので、人間すら存在しなかった時代にビューんと戻ってみる。はたまた未来をチラ見するべく恐る恐る2100年へ。もしくは生きた過去をやり直すだろうか。
ウッディ・アレン監督『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)の本題もタイムトラベルである。本作のタイムトラベラーは、ハリウッド映画の脚本のリライトをし、現在は初の小説に取り組み中のギル・ペンダー(オーウェン・ウィルソン)。フィアンセのイネズ(レイチェル・マクアダムズ)と彼女の家族とパリを訪れている最中、ひとりとぼとぼ真夜中のお散歩に出かけた彼は、謎の車に乗せられ、ジャン・コクトー主催のパーティに迷い込む。どいつもこいつも著名人と名前が一致して奇遇だなぁ!そう思ったのも束の間。冗談にしてはきつすぎるほど次々と1920代を彩る著名人が登場し、ギルは狂騒の1920年代に見事タイムスリップしたと気づかざるを得ない状況に。そうして彼は心をバクバクさせながら、夜な夜な1920年代に通う日々がスタート。
しかし、ギルがタイムスリップをするごとに、一見煌びやかに見える20年代に対する不満が垣間見えてくるように。ギルが恋心を抱くピカソの愛人アドリアナ(マリオン・コティヤール)は、悲しげな顔つきで「毎日が騒々しくて、ややこしい」と語り、ゼルダ・フィッツジェラルド(アリソン・ピル)は20年代を「退屈」と呼ぶ。
未知に心惹かれる人であれば誰しも、いま味わうことのできない「いつか」を夢みたことがあるだろう。でもその裏に隠された日々の倦怠感というのは、どこの誰であろうと、時代を越えようと、変わらないのである。結局はいまのあら探しよりも、いまを好きになることに意味があるのかもしれない。なんていっておいてなんだが、憧れの時代に迷い込めたギルをやっぱりうらやましがってしまうのが本当のところなのである。
(文/鈴木未来)