パルムドール賞受賞!『万引き家族』ようやく観た。
『万引き家族』 公開中
カンヌ国際映画祭で21年ぶりに日本人監督が最高峰パルムドール賞を受賞した。
この映画祭でパルムドールに選ばれる作品は毎年独特な世界観をもち、社会問題が密にあつかわれた作品が選ばれることが多い印象。
本作はまさにそれにあてはまり受賞したのもうなずけるカンヌ好みの作品だ。
是枝裕和監督の作品はいつもどこかいびつな「家族」を扱っている。
子供のいれ違いからみる家族『そして父になる』、腹違いの4姉妹の生活からみる家族『海街diary』。
そして本作『万引き家族』では誰も血のつながりがない家族。
インパクトのある題名の印象と鑑賞後のすべての真実を知ったあとの題名の印象がこんなにも変わる映画は珍しいのではないだろうか。
人間一人一人が抱える心の闇が、各世代ならではのエピソードとともに描き出される。
5歳、10代、20代、中年カップルと年老いた老婆からなる家族。
ネグレクトや虐待を受けていても本当の家族と暮らすことにどんな意味があるのだろう?
どんなに酷い環境にいても子供は親を慕う。そう思っていたけれど、近年家族間のトラブルから殺人事件に発展することが珍しくなくなってきている。
そんなことになるほどの恨みや怒りの感情が増幅する前に、誰か第三者が救ってあげることが可能であるならばそれは悪ではないのではないか。
たとえ血の繋がらない家族だとしても、そこにお互いの心の隙間をジクソーパズルのピースがうまくはまるように埋めあえるなにかが存在するのだとしたら一緒にいさせてあげたいと思わずにはいられなかった。
決して裕福ではない偽物の家族だったから「万引き」という間違った手段で家族のチームワークを試してしまっていたようにも思える。もしもサッカーボール一つあったなら一つのボールを蹴り合って楽しむことも出来たのかもしれない。
一人一人の登場人物の過去を詳細に説明することはないけれどヒントをみれば察しがつく構造になっていることで観客はどんどん作品の世界に引き込まれていくのだろう。
映画館を出る頃には一緒にあの家の縁側にたっていたような気持ちにさえなれた。
(文/杉本結)
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『万引き家族』
公開中
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏 ほか
配給:ギャガ
2018/日本映画/120分
公式サイト:http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
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