もやもやレビュー

酷暑に雪山サスペンス『ウインド・リバー』

『ウインド・リバー』は7月27日(金)より角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

第88回アカデミー賞3部門にノミネートされ話題となった『ボーダーライン』の脚本家テイラー・シェリンダがついにメガホンをとった!

『ボーダーライン』ではメキシコ国境地帯におけるアメリカの麻薬戦争の知られざる実態に迫り、『最後の追跡』では銀行強盗を繰り返す兄弟とそれを追うテキサス・レンジャーの攻防を通して、アメリカンドリームの衰退をあぶり出した。
そして本作『ウインド・リバー』で描き出されるのはアメリカ各地に点在するネイティブアメリカンの保留地の一つであるウインド・リバーが舞台となる。厳しい生活環境を強いられた人々が抱える貧困やドラッグなどの問題を一人の少女が雪山で死んでいたという事件をきっかけに様々な視点から浮き彫りにしていく。
テイラー・シェリンダが脚本を手掛けたこの3作品は「フロンティア3部作」と呼ばれている。
フロンティアとはアメリカ開拓時代の開拓地と未開拓地の境界線を意味する言葉である。この境界線で起こる社会問題や社会問題としても取り扱われない暗い闇にスポットをあてている。

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ハンターのコリー(ジェレミー・レナー)は雪山で少女の遺体の第一発見者となる。現場近くに民家はひとつもない。こんな場所でどうして少女は死んでいたのか?
警官とFBI捜査官とともに事件の真相を追うコリー。事件の真相を紐解きながら、コリー自身もつらい過去の記憶と戦っていた。ラストに待つ予想外の展開は緊迫感があり、真っ白な雪山との相性がよく息をする音さえも邪魔に感じるほどの静けさが心地よい。

アメリカの境界線の問題など難しい話なのでは?と思う人もいるかもしれない。
けれど、もっとシンプルにつらいことと直面した時にどんな風にその物事と向き合うか? 向き合わないで逃げ出すということも一つの答えとしてありなのではないだろうか? そう思える場面がある一方で、辛さと向き合い戦うことで前に進めることもあると、背中をポンッと押されるような気持ちにもなれる。全く反対の答えだけれど一つの映画でどちらの答えも間違いではないと肯定してくれる。文字にしてみると不思議な感じだが作品を見て確かめて欲しい。

(文/杉本結)

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『ウインド・リバー』
7月27日(金)より角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

監督・脚本:テイラー・シェリダン
出演:ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン、ジョン・バーンサル、ギル・バーミンガム
配給:KADOKAWA

原題:Wind River
2017/アメリカ/107分
公式サイト:http://wind-river.jp
(c) 2016 WIND RIVER PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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