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アデルのギャップに萌えて、アデルのギャップに悲しまされる。『アデル、ブルーは熱い色』

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ギャップ萌えという言葉が一時期流行ったのをふと思い出しました。いまや日常的に使われているこの言葉ですが、ギャップ萌えは「外見と内面、印象と実態のギャップ」「時間・場所・状況による変化」「類型からの逸脱・ミスマッチ」「まったく無関係、相反する組み合わせ」など、思いのほかいろんなニュアンスがあることを「ニコニコ大百科」を見て知りました。

『アデル、ブルーは熱い色』(2013)は、カンヌ国際映画祭で最高賞、パルムドール賞を受賞している、同性愛を描いたフランス映画です。主人公のアデル(アデル・エグザルコプロス)がブルーヘアのエマ(レア・セドゥー)に一目惚れするところからはじまる、ふたりの恋愛の一部始終。同性愛がどうというよりも、ふたりの人間が惹かれ合うとこんな歓喜や衝突が生まれるよなぁ、と胸が踊ったり、締め付けられたりする作品です。

そんな本作の魅力の一つが、主人公アデルのギャップ萌え。彼女はたぶん「時間・場所・状況による変化」に当てはまります。なんせアデルは、どんな場面でも意見を主張できるたくましさを持っているし、女子高生の大好物である恋バナでも多くを語りません(さらに、映画の8割は髪がボサボサです)。いうなら、謎めいたサバサバ系でしょうか。だけど(彼女のルックスについて)「クラスでも最高の部類に入っている」なんて女友だちから絶賛されちゃう美人さんなので、にくいです。そこまでさっぱりした性格だからか、出会ったばかりのエマに「今週はどうしてるの?」と聞かれると「試験勉強」なんてさらり。しかし、「よかったら会えるけど」なんてキュートな発言を続けてポロリします。これは萌えます!

ところが、やがてエマと別れることとなってしまい、たくましいアデルはどんどん弱っていきます。普段の強さを貫き通せないくらい、エマに深い愛情を抱いたアデルに泣きます。というわけで、最後にはタフなアデルと弱ったアデルのギャップに悲しまされました。これは「ギャップ萌え」ならぬ「ギャップ・サッドネス」。この言葉はあまり流行らなさそうです。

(文/鈴木未来)

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