もやもやレビュー

悪魔払いされる疾患の正体は......!?『彼女が目覚めるその日まで』

あこがれのニューヨークポスト紙で働く21歳のスザンナ・キャハラン(クロエ・グレース・モレッツ)を襲った病の正体は一体なんなのか?
症状はめまいや手足のしびれ、頭痛や幻覚症状と多岐に渡り、MRIなど精密検査を受けるも異常なし。
異常行動を起こす彼女は精神的な病気の疑いをかけられ精神科への受診を勧められる。
本当に充実した普通の生活に突然じわりじわりを忍び寄る病の様子が丁寧に描かれている。
少しずつ逃げ場を失うような感覚と病気の究明を求める家族の叫びが印象的。

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なんとこの病の正体は映画『エクソシスト』のモデルになった少年が典型的な症例であったとされている。とはいえ決してホラーテイストに本作は描かれていないので、ホラーが苦手な人もヒューマンドラマとして安心してみられる。
過去には疾患とわからず、多くの人が悪魔つきと呼ばれ除霊やお祓いのたぐいを受けてきたようだ。

実は、日本でも年間1000人ほどが同じ疾患を発症していると推定されている。
てんかんやアルコール依存症、統合失調症などと誤診されることもあるようだ。
ただ病気の原因が判明した現代では、医療の力で治療可能な病気になっている。
そのため聞き覚えのないような一つの疾患の存在を認識している人が一人でも多く増えて欲しいと願うばかりである。
89分という短い時間に描かれる骨太ストーリーは、隙間時間にさくっと見るにも丁度良い。

(文/杉本結)

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『彼女が目覚めるその日まで』
12月16日(土)より角川シネマ有楽町他全国ロードショー

監督・脚本:ジェラルド・バレット
出演:クロエ・グレース・モレッツ、トーマス・マン、キャリー=アン・モス、リチャード・アーミティッジ、タイラー・ペリー、ジェニー・スレイト ほか
原作:『脳に棲む魔物』スザンナ・キャハラン著・澁谷正子訳(KADOKAWA刊)
配給:KADOKAWA/G

原題:BRAIN ON FIRE
2016/カナダ・アイルランド/89分
公式サイト:http://kanojo-mezame.jp
©2016 On Fire Productions Inc.

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