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進化する山崎貴監督×20〜90代を演じ分けた岡田准一が見事! 『海賊とよばれた男』

映画『海賊とよばれた男』は、 12月10日(土)より公開です!

山崎貴監督は着実に一歩一歩進化している監督の一人だ。
本作の街並みは、同じく山崎が監督を務めた『ALWAYS 三丁目の夕日』で、時代背景を細部まで調べ上げて作るこだわり方とどこか似ている。さらに、戦争シーンの迫力やリアリティー、爆撃音の衝撃は『永遠の0』で培ったものだろう。

石炭が主要燃料だった時代から、「石油」という新しい燃料の将来性を信じて奔走する青年が主人公。今の出光の創設者が作品のモデルになっている。

主演の岡田准一には細部までこだわり抜いた演技に驚かされる。見事なまでに20代~90代までを演じ分けている。
それは外見にも現れているが、動作一つとっても年代ごとに使い分けているという巧みさ。
歩き方や声色、手の出し方一つさえ違う。さらに、撮影期間中北九州弁を自然に使えるよう、常に「店主」という役になりきっていたようだ。

脇を固める世代の違う俳優陣も一人一人素晴らしい。
存在の安心感では、やはり監督の作品の常連でもある吉岡秀隆がじんわりと心を温めてくれる。
通訳という役どころを演じた鈴木亮平も白いスーツがとても印象的で、得意とする英語もとても聞きとりやすかった。
店主の妻を演じた綾瀬はるかは出演シーンが少ないにも関わらず、見終わった後にも思い出すほど心に残る役だった。

「必ず努力は報われる。見ていてくれる人はきっといる。勇気をもらい明日も前を向く力になる」。そんな力強いメッセージを、明日へのパワーに変換できる作品だ。

(文/杉本結)

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『海賊とよばれた男』
12月10日(土)より公開!

監督:山崎貴
原作:百田尚樹『海賊とよばれた男』
出演:岡田准一、吉岡秀隆、染谷将太、鈴木亮平、野間口徹 ほか

2016/日本映画/145分
公式サイト:http://kaizoku-movie.jp
©2016「海賊とよばれた男」製作委員会 ©百田尚樹/講談社

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