もやもやレビュー

今、旬の俳優たちが魅せる「一生分の恋」。『溺れるナイフ』

映画『溺れるナイフ』は11月5日(土)公開です!

本作は少女漫画が原作です。少女漫画と聞いてただのべタな恋物語かと思いきや、ただの恋ではない。痛々しく胸が張り裂けそうなそんな恋。

東京で雑誌モデルをしていた主人公夏芽は親の都合で和歌山の浮雲町へと引っ越しをすることに。そこで出会ったコウに強烈に惹かれ恋に落ちます。しかし2人を引き裂く事件がおきます。お互いを美しい存在と美化していた2人が、現実とのギャップに気づく瞬間をとても綺麗に繊細に描いているのが印象的です。

作品を通して自然と人間の対比的な色合いが映画を引き立たせていました。森の色彩とコウの金髪、海や空の色と夏芽のファッションどこか絵画を見ているような感覚にもなるとても見やすい作品になっています。

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主演の小松菜奈さんと菅田将暉さん


それにしても、どのシーンを切り取っても苦しい。息をすることを自然と忘れさせるような深い深い海の底へ...不思議な世界へと潜り込んでいったようでした。
また、撮影はほぼ全編和歌山の熊野ということもあり、17日間という過密スケジュールで一気に中学生と高校生のシーンを撮っています。

主演の小松菜奈は独特の存在感と繊細なイメージを守りながらも9月の海や川に飛び込み感情を爆発させ熱演しています。『渇き。』でも感じましたが、感情を爆発させるという日常生活ではなかなか体験できないことをスクリーンの中でとてもうまく表現する女優です。

コウ役の菅田将暉は劇中に登場する「喧嘩祭り」が一番の見どころ。松明をもって踊り神さんに祈るシーンは優れたMVのように美しく力強い。今年だけで映画に9本も出演している、今目の離せない俳優の一人であることに疑う余地はありません。

主演の2人の友人を演じた重岡大毅と上白石萌音もはまり役!
重岡大毅はジャニーズWESTのメンバーですが、関西のノリをそのまま自然体でもってきたような雰囲気は、この緊張感のある作品の中で唯一和めるオアシスのような存在として大きく貢献しています。
上白石萌音は大ヒット中の映画『君の名は。』でヒロイン・三葉の声を担当している今大注目の女優です。中学生時代と高校生で雰囲気のがらりと変わるカナという難しい役で、セリフが少ない中、視線など目でうったえる演技で魅せてくれます。上白石萌音は『ちはやふる』でも「かなちゃん」を演じていましたが、それとは全く違う「カナ」も要チェックです。

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カナ役の上白石萌音さん

作品を通して、大人には真似できない体当たりの恋にクラクラしました。衝撃のラストともいえる一瞬の出来事が忘れられません。原作のファンも原作を読んだことのない人も楽しめる作品になっています。

(文/杉本結)

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『溺れるナイフ』
11月5日(土)よりTOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー

監督:山戸結希
原作:ジョージ朝倉『溺れるナイフ』
出演:小松菜奈、菅田将暉、重岡大毅、上白石萌音 ほか

2016/日本映画/111分
公式サイト:http://gaga.ne.jp/oboreruknife/
©ジョージ朝倉/講談社 ©2016「溺れるナイフ」製作委員会

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