もやもやレビュー

何かと接触したシーンはゼロ『コンタクト 消滅領域』

コンタクト ー消滅領域ー(字幕版)
『コンタクト ー消滅領域ー(字幕版)』
クレマン・コジトア,クレマン・コジトア,トーマス・ビデガン,ナジャ・ドゥモシェル,ジェレミー・レニエ,スワン・アルロー,フィネガン・オールドフィールド,クリストフ・テック
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 冒頭から中盤まで人が次々と消えるのでサスペンスかと思っていたら作中で提示された疑問は何一つ解決されることなくエンディングを迎え消化不良に似た感想だけが残る。一応はオチを付ける(付いているとは言っていない)そこら辺のB級映画よりもさらに酷い。本作は「SFアクションスリラー」とジャンル分けされていたがモンスターも宇宙人も出てこない。アクションと言っても敵との格闘シーンは出てこないし、一向に謎にたどり着かず単に人がいなくなるだけなのでスリルもない。タイトルが『コンタクト』なのに何かと接触したシーンはゼロだ。

 異邦人がその土地のルールを知らずにやらかして不条理な目に遭う、で本作のあらすじは終了するのだがAmazonなどの解説やあらすじでは以下の通りになる。

「アフガニスタンの戦場で仏軍撤退が近づく中、大尉のアンタレス・ボナシューとその分隊は、パキスタンとの国境にあるワクハン川の人里離れた谷での監視任務を任される。
しかしアンタレスと部下の決意とは裏腹に、人里離れた谷の支配権は徐々に彼らの手から離れていく。そしてある夜、兵士たちが不思議なことに谷の中で姿を消し始める。この不可解な事象は人ならざる者の仕業だと話す現地の住人に対し、強気な抗戦体制を崩さなかったアンタレス。しかし人知を超えたその脅威は、彼のすぐそばまで近づいているのだった―」(Amazonのストーリーから引用)。

 こう書くと「あぁ、そういう場面もあったな確かに」という程度には嘘ではないのだが、実際は主人公の大尉たちがゲリラなどからの攻撃を昼夜問わず警戒するシーンが延々と続き、こちらが退屈し始める頃に警戒中の兵士が失踪するという事件が起きる。そこに現地の村人たちが夜な夜な山の尾根で何かを燃やしている姿を目撃。さらに兵士が消え大尉たちは村人の仕業に違いないと村に乗り込み住民を脅迫するも暖簾に腕押し。
 ゲリラたちの仕業かと考えていたところ、宿営地にゲリラが現れ自分たちも兵士の失踪が続いているということで停戦の申し入れ。
 これは村人たちが犯人に違いないと村に乗り込み村人を拷問したところ、村人から主人公たちの宿営地は「アッラーの地」と呼ばれ地面で眠るとアッラーに連れ去られるという伝承があると答える。それを免れるために村人たちはアッラーの地との境界線に羊をつなぎ捧げものとしているということだった。
 これまで失踪した兵士たちは警戒中に地面で眠っていた人間ばかり。真相を確かめるべく大尉は部下に包囲させた小屋に入り床で横たわる。
 翌日、大尉は部下やゲリラたちと一緒に村人が羊をつないでいた場所に向かい周辺を調査。洞窟らしきものが地下にあると判明したことで穴を掘っていたら村人たちが羊をつなぐことができないと激怒。
 混乱した大尉は荒野をさまよい部下に保護されると、掘った穴を埋めさせ消えた兵士4人分の羊を準備させる。その場所に空爆要請を行い羊の肉片を集めて死体袋に詰めた。
 その後、軍から大尉が空爆で部下を誤射させたとして逮捕され、先の羊の肉片が詰まった死体袋が棺桶に入れられエンドロールへ。

 作品の時系列に沿って結構詳細に書いてみたが、読み返しても訳が分からない。これが100分かけた映像になるのだから視聴しても全く分からないと思われる。
 ゲリラ側も兵士が失踪していることから異教徒が宗教的聖地を冒涜したという理由ではなさそうだし、人が消える理由は作中で明示どころか暗示もされていない。最後に大尉がおかしくなった理由も然り。逮捕された理由に至っては本当に理解が及ばない。

 エンタメ要素は上記の通り皆無だし、哲学的要素はもしかしたらあったのかも知れないが、そんなものをSFアクションスリラーなんてエンタメっぽく提示しないで欲しい。

(文/畑中雄也)

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