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命がけの仕事から感じる熱いパッション!『スタントマン 武替道』

『スタントマン 武替道』 7月25日(金)全国公開

香港映画といえばアクションを連想する人も多いだろう。最近では多彩なジャンルの作品が製作されるようになったが、一昔前は香港映画といえばアクションだったように思う。階段やエスカレーターから転がり落ちたり、高い場所から飛び降りるようなアクションも多く、生身の人間がこなすアクションがとても衝撃的だった。現代ではCG技術も加わり、より過激なアクションが見られるようになった。それでも身体をはってCGなどを使わない生身の人間が演じるアクションシーンは見応えがある。タイトルの『武替道』とは「スタントの道」を意味する中国語。本作、タイトル通りスタントマンの生き様が描かれている。

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1980年代にアクション監督として名を馳せていたサム(トン・ワイ)。ところが映画の撮影中にスタントマンに半身不随となる重傷を負わせてしまい、業界から距離をとって生活していた。アクション監督を辞めたサムは整骨院を営みながら静かに暮らしていたが、かつての仕事仲間が「自分の最後の作品でアクション監督をやってほしい」と持ちかけたことで、現場復帰を決意する。

サムにとって久しぶりの現場は昔と違う空気になっていた。撮影はコンプライアンスに厳しく、リアリティを追求するサムのやり方に、アクションスターのワイ(フィリップ・ン)や製作陣は反発。さらに幼い頃に別れた娘のチェリーとの関係も悪化してしまう。サムのアシスタントを務める若手スタントマンのロン(テレンス・ラウ)は、献身的に撮影を進めようとするが......。

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アクションシーンは俳優がすべてを演じず、スタントマンが演じる場合もある。そんな撮影の舞台裏を垣間見たような本作は、製作陣がひとつの作品を作り出すまでにどれだけの努力や試行錯誤を繰り返しているのか体感したような気持ちになれた。製作には現実問題として資金が必要で、映画を撮れる期間も限られている。時には時間との勝負になることもあるだろう。スタントはそんな時でも安全第一に行わなくてはいけない。過激なアクションシーンは「こんなことして大丈夫なのか?」と心配になるようなシーンもあった。

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命がけで撮影に挑むプロ魂には敬服する。一方で、「人の命にはかえられない」という台詞がこの映画のすべてを語っているように思った。映画は俳優にばかり目がいってしまうが、出来上がるまでに多くの人が関わり、費やした時間の分だけ、人の数だけ、そこには人間ドラマもあるのだと感じることができた。

やっぱり映画が好きだと再確認できる作品だった。「スタントマン」という一つの仕事に命がけで向き合う熱い作品。ぜひ、ラストの6階から飛び降りるスタントにドキドキしてほしい。

(文/杉本結)

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『スタントマン 武替道』
7月25日(金)全国公開

監督:アルバート・レオン&ハーバート・レオン
出演:トン・ワイ、テレンス・ラウ、フィリップ・ン、セシリア・チョイ他

2024/香港/114分
公式サイト:https://stuntman-movie.com
予告編:https://youtu.be/msmYbQ5JR8g
©2024 Stuntman Film Production Co. Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.

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