もやもやレビュー

「バカ・エロ・血しぶき」の三大要素は押さえているのだが歯がゆさしか残らない『アクアスラッシュ』

アクアスラッシュ(字幕版)
『アクアスラッシュ(字幕版)』
レナウド・ゴルティエ,レナウド・ゴルティエ,ニコラス・フォンテーヌ,ブリタニー・ドリスデル,マドリーヌ・ハーヴェイ,ポール・ジンノ,ラニサ・ドーン,ニック・ウォーカー
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 B級映画らしく「バカ・エロ・血しぶき」の三大要素は押さえているのだが、いかんせん登場人物が多すぎてとっ散らかった印象が残る。無駄に大量投入された人物たちを中途半端に描くせいで本筋が何なのか分からず視聴後はエロシーンと雑なスプラッターシーンくらいしか記憶に残っていない。もっとも何度も視聴してようやく理解してみてもオチらしいオチは特にないため、ジャケットさえ見ればほぼ映画を見たに等しいのかも知れない。

 そんな映画ゆえ、あらすじらしいあらすじなんてものはないのだが映画サイト等に記載されているあらすじをまとめると「高校生の男女一行は、卒業前の最後の週末を過ごそうとプールにやってきた。過去に事件が起きた水上公園だが彼らは構わずはしゃぎ回りやがて阿鼻叫喚の地獄へと突き落とされる――」という内容になる。

 嘘ではないが72分と短い作品なのにはしゃぎ回るシーンに50分ほど費やされラスト20分でようやく阿鼻叫喚が訪れる塩梅になっている。ホラーシーンに至るまではひたすら水着、ドラッグ、酒に喧嘩と登場人物が漏れなくバカで清々しさを覚えるレベル。とは言え、酒瓶を持ってプールに飛び込んでけがをしたり突然主人公らの三角関係が持ち上がり殴り合いの喧嘩をしたりと、大量のバカキャラがバカをやるシーンを延々と視聴させられるのは辛いものがある。

 高校生たちはチームに分かれてウォータースライダーでレースをすることになり、主人公と喧嘩していた男子が異変に気付き警告するも無視される。ここで初めてジャケットのシーンが出てきて哀れ女子高生たちが切り刻まれ、その後も次々とスライダーに乗り込んだ高校生たちが血や臓物になっていく。冒頭から中盤の無意味な乱痴気騒ぎは何だったのかという駆け足で人が続々と死んでいく。ちなみに、パーティに参加してドラッグをやりながら若い浮気相手とあれこれした主人公の父親である不動産王も一緒に退場し、主人公はトラウマと莫大な遺産をゲット。

 最後にこの惨劇の犯人は主人公の母親であると明かされ、過去に起きた事件の被害者は母親の父親、つまり主人公の祖父であることも判明する。しかし高校生らを殺害した動機については何も語られずエンドロールへ。

 エロシーンは視聴者サービスなのだろうが本筋に何ら結びつかないのに冗長で、ホラー映画なのにホラーシーンが駆け足という雑さ。求めるものを何一つ満たしてくれない歯がゆさを感じる作品だった。

(文/畑中雄也)

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