もやもやレビュー

タイトルのアックスが活躍するシーンが皆無『アックス・マーダー・ハウス』

アックスマーダーハウス [レンタル落ち]
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ホラー映画を視聴する動機は人それぞれだろうが、多くの作品で血のりや肉塊が飛び交っていることを踏まえるとスプラッターな部分に需要があるのだと思う。そして本作のタイトルが『アックス・マーダー・ハウス』。「斧を持った怪物に人々が襲われるのかなぁ」と眺めていたら半分くらいは何も起きず。「それでも誰か酷い目に遭うだろう」と思って視聴を続けても全員無事のまま終わってしまった。サメ映画にサメが出ないことは珍しくないが、ホラーなのにグロい要素がないのはどうなのか。

一晩で8人が斧で惨殺されるという未解決の惨殺事件が起きた民家である心霊スポットに、自称ゴーストハンターで動画配信者の男子高校生2人と同級生の女性1人が侵入する。そこで主人公たちは怨霊たちに取り憑かれ――という内容。

あらすじ自体はバカな若者が自業自得で酷い目に遭うという、親の顔より見たプロットでホラーの王道と言えば王道。作品の妙はその骨組みにどんな肉付けをするのかということなのだが途中からメインが未解決事件で殺害された姉妹の霊に移り没入感がない。高校生3人組のトラウマやら何やら人物設定を細かく練った形跡は見られるものの、78分という短い尺なのに何も出てこない前半部のせいで全くの蛇足に。彼らのトラウマを刺激して霊が取り憑くはずなのに、トラウマ要素皆無な悪ガキも取り憑かれているので無駄な設定でしかない。

作品の前半部では霊に取り憑かれた主人公の3人は自殺しようとしたり仲間に請われて殺害しようとしたりとしているところに上記の姉妹の霊が出てくる。姉の霊が主人公たちを襲うところを妹の霊が助けるが特に主人公たちとの絡みはなし。あと唐突に「我は神以前に生まれた存在だ!」とか言い出す霊に取り憑かれたり視聴者不在のやり取りを続け、その最中にうっかり燭台をひっくり返してお家が火事に。現在まで斧は使用されず。

主人公たちは無事に民家から逃れ作品は終わるのだが「2014年に宿泊客が自傷しましたが事件と本作は一切関係ありません」というテロップが流れてエンドロールに。本作のアメリカ公開が2016年だから当然関係はない。何の効果を狙ったテロップなのか......。

ホラー作品なのに恐怖を煽ることはなくグロテスクなシーンも皆無。何に怖さを感じたらよいのかまるで分からない作品だった。

(文/畑中雄也)

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