もやもやレビュー

熟年ゲイカップルの真っ直ぐな愛『人生は小説よりも奇なり』

人生は小説よりも奇なり(字幕版)
『人生は小説よりも奇なり(字幕版)』
アイラ・サックス,ジョン・リスゴー,アルフレッド・モリーナ,マリサ・トメイ
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第30回インディペンデント・スピリット賞などをはじめ様々な映画賞にノミネートされた映画『人生は小説よりも奇なり(原題Love Is Strange)』。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でドクター・オクトパスを再演したことが話題となったアルフレード・モリーナと、『フットルース』や『インターステラー』など数々の名作に出演してきたジョン・リスゴーが熟年カップル役を演じ、『あぁ、結婚生活』『ポルトガル、夏の終わり』などのアイラ・サックスが監督・脚本・製作を務めました。

 長年連れ添ったカップルのベン(ジョン・リスゴー)とジョージ(アルフレード・モリーナ)。同性婚が合法となり、晴れて2人は結婚して結ばれるところから本作はスタート。マンハッタンで行われた結婚式では、和やかで幸せな時間が流れます。しかし、保守的なカトリック大学で音楽教師をしているジョージは、この同性婚が雇用条件に反していることから、クビを宣告されてしまいます。生活苦に陥ったベンとジョージはアパートを売り払うことにしましたが、当分のあいだベンは甥の家族、ジョージは隣人のアパートに別々に居候することに。

おしゃべりなベンは、甥の奥さんで小説家のケイト(マリサ・トメイ)を困らせ、ケイトの息子ジョーイにも煙たがられてしまう。一方、ジョージはパーティ好きの隣人の生活リズムに合わすことに苦労していきます。新婚なのに家を無くした2人は、別々の生活をすることで、自分たちが「迷惑な存在」になってしまっていると実感。その経験からお互いへの愛をより深めていきます。

 実生活でも長年の友人であるジョンとアルフレードがカップル役を演じているとあって、2人の仲の良さがスクリーンに反映されほっこりできるシーンあり。その一方で老いていく事への怖さを感じるシーンもありで、様々な感情がうごめく一本ですが、その土台には2人の真っ直ぐな愛が描かれているとても美しい作品となっています。

 ちなみにサックス監督は、長年のパートナーと結婚してマンハッタンに住んでいるそう。この映画で描かれるゲイの警官の隣人は実在の人物からインスパイアも受けているので、やや半自伝的な作品でもあるようです。「ほっこり映画」というワードがぴったりな本作は、映画鑑賞後に人生における大切なものについて考えさせられる一本です。

(文/トキエス)

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