もやもやレビュー

85分かけて視聴者に後味の悪さを植え付けることを目的にした『ネイルズ -悪霊病棟-』

ネイルズ -悪霊病棟- [DVD]
『ネイルズ -悪霊病棟- [DVD]』
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 ジャケットが不穏かつ、「その"爪"の秘密だけは"絶対"に知ってはならない――」というキャッチコピーに惹かれて視聴してみた。ある意味タイトルに偽りはなかったのだが、キャッチコピーにある"秘密"とやらはネットや病院関係者の口からペラペラ漏れるし、ご都合主義の極みを見せられた気分。すべてのシーンが既視感のあるようなものばかりで、そういうクイズだったのであれば別の楽しみを見出せたのだろうけども......。

 Amazonなどの解説によると、陸上競技コーチである主人公のデイナは自動車事故に遭い生死をさまよう重傷を負った。臨死体験を経て入院した主人公は喉に人工呼吸器をつけて不自由な生活を送る日々。ある夜、「ネイルズ」と呼ばれる不気味な幽霊に悩まされるようになるが、家族や看護師は病院生活のストレスによる幻覚だと取り合わない。デイナは一人で幽霊と戦うことを決意する――という内容。

 内容に嘘は書いていないのだが、視聴後の感想が「あらすじと全然違うじゃないか!」となるのは冒頭の設定がことごとくひっくり返るから。幽霊の存在がネットで新聞記事を検索したら出てくるというのも雑だし、それを病院の医師がことの顛末を詳しく教えてくれるのもどうなのかと。しかも幽霊の正体が病院内で少女への殺害を繰り返した挙句に自殺した殺人鬼で、それが被害者の爪を集めていたから「ネイルズ」という名前も安直すぎないか。しかも主人公は記憶が抜け落ちているだけでその殺人鬼と同時期に入院していたという後付けマシマシな設定。ちなみに主人公の病室は「ネイルズ」が自殺した部屋。

 また、主人公以外には誰にも見えないから不気味だった存在が突然理由もなく医師や看護師や主人公の家族に見えるようになり派手に殺害をしていくようになる。殺人鬼の幽霊なのにどうして今まで誰も殺さなかったのか。無論、そんな理由を説明するシーンはなく物語は進行していく。

 派手に暴れる「ネイルズ」はとうとう主人公を追い詰め、娘を守るために自身が「ネイルズ」に殺されるというオチ。満足したのか「ネイルズ」は消滅してエンドロールへ。85分かけて視聴者に後味の悪さを植え付けることを目的にしたような作品だった。
 とは言え、冒頭は体の不自由な主人公にしか見えない幽霊と戦うという内容で怖さはあったのだが、同じネタを延々とこするものだから中盤以降は「またこのパターンか......」と飽きてくる。短編だったらベタなホラーとして楽しめたかも知れない。

(文/畑中雄也)

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