もやもやレビュー

世代を超えた友情に感動!『不思議の国の数学者』

不思議の国の数学者
『不思議の国の数学者』
パク・ドンフン,チェ・ミンシク,キム・ドンフィ,パク・ビョンウン,パク・へジュン
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 本作を観て、苦手だった数学をまた勉強してみたいとさえ思いました。

 ソウルの進学校に特例入学の枠で入学したジウ(キム・ドンフィ)は、幼い頃に父を交通事故で亡くし、母子家庭だったこともあり決して裕福な家庭ではありませんでした。共に寮生活を送る同級生はお金持ちの子達ばかりで、週末になると皆塾に通いに帰ります。そうしてジウと周りの学力の差は歴然。学校にも馴染めず、担任の先生からは他校への転校を進められる始末です。

 ある夜、ジウは部屋の同級生にパシリにされて、お酒や食べ物の買い出しをさせられます。しかし、夜勤勤務の警備員ハクソン(チェ・ミンシク)に見つかり、バツとして一か月の退寮をさせられます。帰宅するもジウを誇りにしている母に言えず、学校に戻ったところを再びハクソンに見つかり、一晩雨宿りさせてもらいます。 

 翌日、数学で出されていた宿題がなぜか全問正解で、それはハクソンが何気なく解いていたものでした。驚いたジウは、ハクソンに数学を教えてほしいと何度も懇願します。ハクソンは、口外しないことや数学以外のことを質問しない等を条件に、ジウの頼みを渋々引き受けます。
 かくしてジウは、夜の地下教室で内緒でハクソンから数学を教えてもらうことになりました。と同時に、ジウにとって数学だけではなく、学ぶこと自体や、よもや生きる上での考え方をも学ぶ時間ともなったのです。

 例えば、ハクソンが初めに出した問題は、問い自体が間違ったものでした。間違った問いから正しい答えは出ない、問いが何かを知ること。そして正解を出すより答えを導き出す過程が大事なんだと教わります。
また、数学が得意になるために大切なことは、頭がいいことや努力することでもなく、「今日できなかった問題を明日も解いてみよう」と思う余裕をもつこと。そうやって淡々と地道にできる人が数学が得意になること。
 他にも、公式を覚えて解くだけでは仲良くなれない。体当たりしてこそ仲良くなり理解でき、理解してこそ愛せるのだと。地道に計算するのではなく、大事なのは考えること。労力を費やしじっくり考えろということ。

 結果が全てのことも多いですが、そこに至る過程で得るものは大きかったり。余裕をもつことは何をするにも大事だし、考える力があれば人に頼らず自分できちんと結論を出せる。

 先生でもそんなこと教えてくれる人なかなかいないですよね、少なくとも筆者は出会うことはできませんでした。一体ハクソンは何者か、その正体もとても衝撃的です。また劇中の音楽もとても心地よいので、時間のある年末年始に激しくおすすめです。

(文/森山梓)

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